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想定外?!イトゥアーノ優勝

ニッケイ新聞 2014年4月16日

 Deu Zebra!(予想外の活躍)との見出しがあちこちの新聞に踊った。ソロカバ近郊のイトゥアーノ(IT)がサントスに勝って優勝したサンパウロ州選手権のことだ。サッカー評論家ソルマニはブログに《ジュニーニョ(IT会長)は全伯のクラブ会長の前で、敵チームの予算の10分の1、有名選手ゼロでどうやって勝ち抜いたかを講演すべきだ》と書いた▼コリンチャンスとは直接対決しなかったが、サンパウロ、パルメイラスとサンパウロ市3強を落とした。おかげで地方勢主体という異例の展開となり、サンパウロ州サッカー界の地殻変動開始を予感させている。04年にサンカエターノが優勝した時も新時代を思わせたが、すぐに凋落した。ITにはこの強さを持続させてほしい▼負けたとはいえ、この10年間で5回の州優勝を誇るサントスの腰の強さ、新人の大半が少年予備軍から上がってくる育成能力は半端ではない。新人プロ選手の登竜門、1月のサンパウロ市杯でも8戦全勝で優勝し、その勢いが1軍に流れ込んだ▼サントスの定款には「収益の10%を予備軍に投資すべし」と明記されている。その資金でサッカー学校を次々に開設し、オリェイロ(新人発掘要員)を契約し、才能ある10歳前後の少年をどんどん送り込んで、サッカー漬けの合宿生活の中で切磋琢磨させる仕組みだ▼全92校のうち最多64校はサンパウロ州内、その他の国内に34校、パラグアイに4校、米国、韓国、日本にもある。いつか日本で発掘された才能が活躍する日が来るかもしれない▼あどけない10代が凄まじい競争に晒されている。サッカーと同じ情熱を、なぜ学問には注げないのか――それが疑問だ。(深)