ニッケイ新聞 2014年4月16日
人気絶頂のまま、1982年に37歳の若さでこの世を去った、ブラジル音楽界が生んだ最高の女性歌手と謳われるエリス・レジーナ。2015年は彼女の生誕70周年にあたるため、現在もろもろの企画が進行中だ。
エリスの長男として知られるジョアン・マルセロ・ボスコリさんは、生きていれば来年3月17日に70歳になっていた母のために、世間をもう一度母に注目させるべく動いている。「この国にはエリゼッチ・カルドーゾやナラ・レオンのように、若い世代にも歌い継がれるべき今は亡き偉大な歌手がいる。しかし、彼女たちが聴かれるための努力は残念ながらなされていない。僕は遺族こそ、それをするべきだと思うんだ」とジョアンさんは語る。
そんなジョアンさんが目下のところ行っている作業は、エリスの最高傑作のうちの1枚と呼ばれる1972年発表のアルバム「エリス」のデジタル・リマスターだ。この作業は、アルバムの元を録音したテープの劣化を防ぐためにハード・ディスクに音を乗せ代え、オリジナル音源が発表当時に持っていた瑞々しさを復活させるものだ。
ジョアンさんは現在、この作業をブラジルきってのレコーディング・エンジニア、カルロス・フレイタスさんと行っている。フレイタスさんはチタンス、ジョアン・ジルベルト、レジオン・ウルバーナといった著名な国内アーティストをはじめ、イギリスの大物歌手ジョージ・マイケルなどとも仕事を行ったことでも知られている。フレイタスさんの作業により、音質が保たれるのみでなく、ドラムのキレや重低音のメリハリなどは以前に増して向上。それが「三月の水」や「ナーダ・セラー・コモ・アンテス」「扉を抜けて」といった名曲群に新たな息吹を吹きかけているそうだ。
ジョアンさんによると、この「エリス」のほかにも、2015年にかけて特別企画のCDやDVDが盛りだくさんとのことだ。その中の候補には、エリスが1979年に来日公演を行なった際にNHKが録画している貴重な映像もあるとのことだ。
ジョアンさんは、国際的な音楽アーティスト関連商品をブラジルでライセンスしてネット販売を行う会社「バンド・アップ」の共同経営者で、母エリスに関連する商品もエルヴィス・プレスリーやビートルズのものと共に売っているという。「それはもちろん、良い金にはなるよ。だけど真の目的は母の名をずっと残すことにあるんだ」とジョアンさんは語っている。
なお、サンパウロのテアトロ・アルファでは現在、エリスの伝記ミュージカル「エリス~ア・ムジカウ」も公開中だ。(14日付エスタード紙などより)