ニッケイ新聞 2014年4月17日
6月12日にW杯の開幕戦が行われるサンパウロ市のアレーナ・コリンチャンス(通称イタケロン)が、形式的に納入された15日、サンパウロ市とリオ市でW杯反対のデモが行われたと16日付伯字紙などが報じた。
サンパウロ市のデモ参加者は午後6時にパウリスタ大通りのサンパウロ美術館(MASP)に集まった。MASPでは「目覚めよブラジル」などの落書きが行われたものの、1千~1500人はレボウサス~ヴィタル・ブラジルの各大通りを平和的に行進した。
だが、平和裏に進むデモ隊に安心した警察隊が警備を解いたヴィタル・ブラジルで、ブラック・ブロックの3人が銀行3行と公衆電話、ゴミ箱を破壊し、突撃隊出動という事態が生じた。この3人は午後7時頃からデモに加わっていた。
ブラック・ブロックの破壊行為に気づいた軍警が3人を追いかけて地下鉄ブタンタン駅に着いた時点で、駅を包囲していた突撃隊が追跡を継続。駅構内に入ってきた警官がデモ参加者を追い詰めたりする様子に驚いた乗客は一時的にパニックに陥った。警察は最終的に未成年者3人を含む54人の身柄を拘束して連行した。拘束された人の荷物からは火炎瓶やペンキなども見つかっている。
他方、リオ市でのデモは、電話会社Oiのビルを占拠していた人々が11日に強制退去させられた後に市役所前で行っていた抗議行動が主体となり、一時はバスへの投石などの破壊行為も起きたため、軍警や市警備隊が出動。市役所前には突撃隊も配備された。
Oiビルの占拠者やブラック・ブロックのデモに合流するためにW杯反対派が動き出したのは午後7時半。W杯反対のデモがカンデラリアを出たのを見た警察は、8時過ぎにレジデンテ・ヴァルガス大通りや地下鉄シダーデ・ノヴァ駅を封鎖したが、どちらも10~20分で開放された。
サンパウロ市のデモのテーマは「公衆衛生」で、参加者は「W杯は国のために開催されるべきなのにそうではない。W杯につぎ込んだ大金は慢性的な問題である公衆衛生に投資すべきだ」などと声を上げた。リオ市でも「FIFAの規格に沿った学校や地下鉄、電車、バス、船に病院を」との要求が掲げられた。
皮肉な事に15日は、当初予算8億2千万レアルとされていたイタケロンが座席増設や周辺整備を終えないまま形式的に納入された日でもある。建設費総額はほぼ10億レアルになる見込みで、内4億2千万レアルは、サンパウロ市市役所が開発刺激認定証(CID)発行の形で提供した。減税措置なども含めた公的支援は相当額に上るはずだ。