ニッケイ新聞 2014年4月17日
「え~、クマさん死んじゃったの?」―サンパウロ市南部ジャバクアラにある動物園のクマの洞穴の前に来た子供達が素っ頓狂な声を上げる。
エリカ・リベイロさん(33)も、「ここに着いた時、ハゲタカ用の場所に変わったのかと思ったわ。クマは一体どこにいるの?」という。
実際にはハゲタカは動物園の至る所にいるのだが、いつも見慣れたクマの洞穴やその周辺が黒っぽく見えるほどハゲタカが群がり、新しい種類の鳥用の場所に代わったかの錯覚を抱くのはエリカさんや子供達だけではない。動物園に異変が起きているのだ。
本当の主、クマのディンゴは、一日の大半を洞穴の中で過ごす。2歳のグスターヴォ君が思わず漏らした「何、あれ?」の言葉に、抱いていたヴァウデシラ・マジニさん(61)が「ハゲタカよ」と答えると、愚スターヴォ君がまた「ハゲタカ?」と聞き返す。
ちょうどそこへ出てきたディンゴは、ハゲタカを追い払うとゆっくりと歩き回り、観客の視線を独り占めしたが、それも束の間。しばらくすると再び、ハゲタカが群がる姿が見られた。
動物園の関係者は多くを語らないが、ハゲタカが出現し始めたのは近くにあったゴミ捨て場が閉鎖されてからだという。関係者達はハゲタカの増殖を防ぐため、ハゲタカが来やすい場所には食べ物や有機ゴミを置かないといった対策を採っているが、大都会のサンパウロ市の真ん中にも関わらず、緑がふんだんにある上、柵で囲まれた動物園は、ハゲタカにとって、命の危険を脅かされる事が少ない安全な場所の一つでもある。
ハゲタカの増加は、コンゴーニャス空港に離着陸する航空機の事故や故障にも繋がりかねないと心配するのは、インフラエロ(ブラジル空港インフラ業務公社)。3月には動物園に対し、航空機の動きの妨げになるとの懸念を文書で伝えた。
動物園側は、ハゲタカに餌を奪われたりした動物が欲求不満を起こす可能性があるし、糞などが他の動物に病気をもたらしたり土壌を汚染したりする可能性もあると懸念するが、鳥の生態に詳しい生物学者のファビオ・シュンクさんは、ハゲタカの糞が大量にたまれば土壌汚染などの可能性もあるが、ハゲタカは一般的に病気を媒介しない、きれいな鳥だという。
ファビオさんは、「鳩は病気を媒介するのに、かわいいという人が多いが、病気も媒介せず健康で、自然界のバランスを保つ働きもしているハゲタカには拒絶反応を起こす人が多い」とし、偏見を是正して欲しいと呼びかけている。13日付フォーリャ紙より)