ニッケイ新聞 2014年4月18日
【エクアドル発=秋山郁美通信員】エクアドルのキト補習授業校(根上宏ねあがりひろむ校長)で5日、2014(平成26)年度入学式が行われ、小学一年生に2人、先週小学部を卒業した3人が中学部に入学した。
保護者、講師、在校生に見守られる中、会場の音楽室に入場したのはそれより多い9人。キト日本人学校が03年に閉校し、補習授業校となって以来初めての〃大人数〃だ。
というのは、これまでは「日本での帰国を前提に日本語で授業を行う」という条件のもと、あまり日本語を話さない児童の入学を断ってきたが、同国での駐在員減少により状況が変わってきたからだ。
「せっかく勉強したい子供たちがいるのに、断ったら生徒がいなくなる」と父兄が話し合い、根上校長も方針を転換、昨年度からスペイン語での補助がいる児童も参加できるようにした。
また習熟度によって、日本政府への登録上は進級するが実際の授業ではもう一度一年生を繰り返すことにしたり、登録はできないが聴講生として授業に参加したりする児童も受け入れ始めたため、正式な人数と実際授業を受ける人数がずれるという状況が出てきた。
式には小滝徹日本大使、武田正弘日本人会会長らが来賓として出席し祝辞を述べた。
小滝大使は「友達と日本語いいな一年生」という俳句を新入生に送り、日本語だけでなく日本文化にも親しんでいきましょう、とにこやかに語りかけた。新一年生は、あまり慣れないお辞儀をして大使から新しいノートと鉛筆を受け取った。
武田会長は、パキスタン・カラチ駐在中での息子の入学式を思い出し、「週一日だけの補習校でもかけがえのない友達ができる」と述べた。
根上校長は「ここでは子供を入れたら終わりじゃない。親も全員参加で運営していかないと成り立たない。頑張りましょう」と父兄を激励した。今年度はすでに5月の地元大学のイベントでの出店や、大規模な七夕祭り開催と参加が決定しており、父兄はそれにむけての準備が忙しい。
バザーでの収益は学校の維持に必要不可欠であり、子供の授業を待つ間親はほぼ毎週会議やバザーの準備をしている。
入学式の後はさっそくイベントで販売する食べ物の検討が行われ、子供たちも放課後は出し物の練習をした。必死で学び舎を守るキト補習校の一年が賑やかに始まった。
文部科学省の資料によれば12年4月現在で、日本人学校は世界50カ国・地域に88校、補習授業校は55か国・地域に202校設置されている。