ニッケイ新聞 2014年4月23日
【既報関連】05年10月に静岡県湖西市で山岡理子ちゃん(当時2歳)が死亡した自動車事故に関して、事故後に帰伯していた日系人の藤本パトリシア被告に対する控訴審の判決が14日に出た。サンパウロ州高等裁は、2年2カ月の禁固などを命じた昨年8月の一審判決を覆し、「時効」を認める判決を下した。
この件に関して、山岡夫妻は本紙メール取材に対し、「今後どうすればいいのか。もうどうしようもないのか。悔しくて悔しくて。理子に申し訳なくて…」と言葉にならない悔しさを表明した。
二宮正人弁護士(65)は「無罪ではなく有罪で、日本で言えば、執行猶予がついたようなもの。そのことだけでも評価されれば」と話す。静岡新聞の取材に「一審判決から減刑した理由はわからない」とし、国外の事件でも時効進行の中断はないことを挙げながらも「残念だが、仕方ない」と話す。犯人の引き渡しを求める70万人の署名を集めた理子ちゃんの両親に対し「本当に頭が下がる」と敬意を表すが、「犯人の引き渡しも無理。これ以上やりようがない」と肩を落とす。
被害者の山岡夫妻が容疑者の日本への引き渡しを求め、外国人引き渡し条約締結、司法共助協定に関する署名活動を行った際、当地で署名収集に協力し、当地から3千人以上の署名を送った静岡県人会元事務局長鈴木幸男さんは、「ぼくたちがしたことは意味がなかったのか…罪を犯した人が、当然処罰されるべき。このニュースは非常に残念」と語る。
在日ブラジル人コミュニティからは様々な懸念の声が上がっている。近畿大学のリリアン・テルミ・ハタノ准教授は「この出来事が日本で新たなブラジル人や外国人の排斥運動に発展するのではと気がかり」と語る。
静岡新聞の取材に対し、浜松市で外国人の子どもたちの学習支援を続けている金城アイコさん(50)=同市東区=は「日本に暮らすブラジル人の青年に『逃げれば罪に問われない』というメッセージとして受け止められると怖い」と危機感を口にする。
ブラジル人向けのラジオ番組などを通じて遺族を支援してきたNPO法人「ブラジルふれあい会」の座波カルロス理事長(50)は、「本当に悪くないと思っているのなら、日本に戻ってきて裁判を受けるべき。両国のルールの違いを利用して罪を逃れようとしたなら許されない」と同紙に語っている。