ニッケイ新聞 2014年4月23日
コロンビアが生んだ1982年のノーベル文学賞作家で「南米文学史上最高の作家」と称されるガブリエル・ガルシア・マルケス氏が17日、メキシコシティの自宅で死去した。18日付伯字紙が報じた。
1927年にコロンビア北部のアラカタカで生まれたマルケス氏は、1947年にボゴタ国立大学の法学部に入学したが、その後ジャーナリズム学に転籍、若い頃はジャーナリストとして活動した。マルケス氏は小説家としてのみならず、優れたルポルタージュも多く発表しているが、彼自身、「ジャーナリストの基本がなければ作家にはならなかった」と語っている。
1961年に完成した『大佐に手紙は来ない』をきっかけに小説家としての活動を本格化させたマルケス氏は、1967年、『百年の孤独』を発表した。架空の都市マコンドでのある一家の一世紀に及ぶ歴史を書いたこの小説は、現在まで全世界で3千万部を売り上げる大ベストセラーとなり、マルケス氏の名前を世界的に知らしめた。
同氏は、アルゼンチンのホルへ・ルイス・ボルヘスとフリオ・コルタザール、ペルーのマリオ・ヴァルガス・リョサの各氏と共に「南米文学」を文学界の一大潮流に押し上げた。『百年の孤独』で見せた、現存しない架空と現実を組み合わせる手法は「魔術的リアリズム」と称され、大江健三郎や中上健次、筒井康隆各氏の日本文学者にも強い影響を与えた。
その後も『族長の秋』(75年)『予告された殺人の記録』(81年)で話題を呼び、82年に南米で4人目となるノーベル文学賞を受賞した。
その3年後の85年には『コレラの時代の愛』も大ヒット。同作は2007年にハリウッド映画化され、ブラジルの大女優フェルナンダ・モンテネグロ氏も出演した。ブラジル内でも3作のマルケス作品が映画化されている。
またマルケス氏はジャーナリストの頃から取材していたキューバの指導者フィデル・カストロ氏と懇意の左翼派として知られ、その点で同じ南米のノーベル文学賞作家のマリオ・ヴァルガス・リョサ氏と反目していたことでも有名だ。
99年に癌を患い、体調不良が続いていたが、2004年には新作『わが悲しき娼婦たちの思い出』が話題作となった。その後は老年性認知症の症状も強くなり、死の直前には癌の再転移が世界的に報じられていた。
マルケス氏の遺体は17日夜、身内のみの葬儀の後に火葬された。21日にはメキシコシティで、故郷コロンビアと約30年住んだメキシコの両国の大統領も参列しての別れの会が催された。