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■ひとマチ点描■「生き方そのものがアート」

ニッケイ新聞 2014年4月24日

「来年こそ」と意気込む楠野裕司さん

「来年こそ」と意気込む楠野裕司さん

 「来年の日伯修好120周年では何かやりたい」。東洋街の外れにある行きつけのシュラスカリアでセルベージャを片手に、そう熱く語るのはアートプロデューサーの楠野裕司さん(71、北海道)だ。

 10代後半、夕張から上京し割烹料理屋で修行中に客の芸術家からセンスを認められ、「写真家になれ」と薦められた。初めて撮った被写体が〃日本の喜劇王〃エノケンだったとか。

 軍政だった74年に渡伯し「軍施設が近くにあるせいか、イビラプエラ公園で写真を撮っていただけで、カランジルー刑務所にぶち込まれた」という。映画にもなった南米最大の刑務所だ。型破りな雰囲気が共感を呼んで日伯に幅広い人脈を築き、数々の舞踊公演などのイベントを成功に導いた。3月28日付夕刊フジでも楠野さんの記事が出て《生き方そのものがアート》と評された。

 来年に向けた意気込みの裏には、亡き妻なつみさんとの約束がある。01年に早世した弟隆夫さんが当地に舞踏を伝えた功績を後世に伝えていくため、記念公演を3年に1度すると二人で決めていた。しかし、そのなつみさんも07年に不慮の死を遂げた…。

 「新世代を使った舞台を」との構想に燃えている。120周年にふさわしい渾身のイベントが見られるかも。(石)