ニッケイ新聞 2013年12月5日
マリア・アパレシーダさん、モラエスさん、ジョゼ・ダ・シウヴァさん—。一見、何の繋がりもなさそうな3人だが、実は3人とも、同姓同名やよく似た名前の容疑者らと誤認逮捕され、数時間から数年間、身柄を拘留されたという経験を持つ人達だ。
フォーリャ・デ・サンパウロ紙がまとめた数字によると、1994年以降、名前やあだ名が似ているなどの理由で誤認逮捕され、サンパウロ州当局を訴えている人の数は少なくとも56人。56人が投獄されていた時間は7年8カ月18日14時間に上り、賠償金総額は170万レアル。ただし、州政府が上告したため、賠償金は未だに支払われていないという。
被害者の中には身分証明書を悪用された人もいるが、マリア・アパレシーダさんがアパレシーダ容疑者、モラエスさんがモライス容疑者、Zを使って書くバルボーザさんがSを使うバルボーザ容疑者と間違えた例などは、十分な捜査や裏づけもなく起きた誤認逮捕の一例に過ぎない。
例えば、2007年に9カ月と20日投獄されたエロニウド・フルトゥオーゾ・コレアさん(41)は、ニウドというあだ名のせいで、レオニウドという名前の容疑者と誤認された例だ。
事件当時、エロニウドさんは既に30代に入っていたが、レオニウド容疑者は未成年。身長や髪の毛などの特徴はぜんぜん違うのに、あだ名が同じというだけで投獄されたエロニウドさんは、陪審裁判にかけられた時点でやっと無罪判決を得、自由の身になった。
最終的には真犯人が逮捕された後に開放されたが、逮捕される15年前に盗みの罪で捕まった事があったため、殺人なぞ犯していないと容疑を否定しても信じてもらえなかったという。
逮捕された時はまだ8歳だった娘や妻との時間を奪われ、モトケイロとして10年間勤務していた会社からも解雇されたエロニウドさんは、州政府相手の訴訟で3万1100レアルの賠償金を受け取る事になったが、賠償金がいつ支払われるのかは誰にもわからない。「俺の人生は未だに狂ったまま」というエロニウドさんは、賠償金でピツァリアを開業するつもりだという。
58歳のマリア・アパレシーダ・ラディウクさんは2001年、義理の姉で赤ちゃん誘拐犯のアパレシーダ・ラディウク容疑者と間違えられ、6日間投獄された。「連行される間中、警官が『赤ん坊はどこだ。どこに隠した』と怒鳴ったけど、何の事だかさっぱりわからなかった」と言い、取調べ中に暴行された上、刑務所の中でも収監者達から「死ね」という罵声を浴びたという。
58歳のジュランジール・シャヴィエル・ダ・クルスさんは2002年のクリスマス直後、身に覚えもない事で警官から尋問を受けたと文句を言いに警察署に行ったところ、殺人犯とされて即逮捕。家族に電話をかける事さえ許されないまま、18日間身柄を拘束されたが、幸いな事に、弁護士の婿が逮捕令状をとったコチアの警察まで出向いたところ、殺人犯が数年前盗まれた身分証明書を偽造して使っていた事が判明。犯人はドイツ系の白人で金髪だったが、ジュランジールさんは黒人である事などで無罪が証明されて開放されたが、それ以来、トラウマに陥り、家にこもりっ放しだという。(11月24日付フォーリャ・デ・サンパウロ紙より)