ニッケイ新聞 2013年12月10日
分かれた妻への暴行疑惑で起訴されたアラゴアス州選出のアルトゥール・リラ下院議員(進歩党・PP)に対し、ルイス・フックス最高裁判事が6日、被害者の供述通りなら「総合格闘技(MMA)の選手も耐えられないほどの暴行」だが、鑑識の結果はそれほど重篤な事件ではないと言った事で物議を醸したが、最終的には同下議への最高裁審理が決まった。
事件発生は2006年で、元妻のジュリエネさんによると、リンス下議は、ジュリエネさんに40分間に渡って暴行を加えたという。その事実は子供の一人の乳母だった女性も、同下議は「内出血しないよう握った手で殴ってやる」といいながら暴行を加えたと証言している。
フックス判事は「握った手で殴ると痕跡が残らないというによるという事実はあずかり知らぬ」と前置き後、「40分も続けざまに暴行されたのではMMAの選手も耐えられない」として、ジュリエネさんの供述に疑問を呈した。
「個人的な経験だけで話しているのではなく、スポーツ好きな人なら、MMAのトーナメントでも、40分も殴り続けられれば、命を落とす事さえある事を知っている」として、「日頃から鍛錬している選手でさえ、5分戦っては1分休むという約束に従って3ラウンド戦うのであって、本職の選手でさえ耐えられないような事を一介の主婦に対して行ったなら、それ相応の痕跡や障害が残るはずだ」とした。
鑑識からの報告によると、ジュリエネさんの腹部と脚には内出血の跡があり、暴行を受けた事は明白だが、フックス判事は、被害者の言い分は鑑識の結果とは合致せず、行き過ぎが供述と結論付けた。
これに対し、ローザ・ウェベル判事は「実際に暴行を受けた時間はどれだけか」「内出血の原因は何か」と質問。非政府団体の代表達も、「ブラジル国内での家庭内暴力の件数は非常に多く、本当に40分間殴られたかだけが問題ではない。中には40年間殴られっ放しの女性だって居る」として、いまだに男性中心主義がまかり通る社会を変える意味で、家庭内暴力再発防止のために制定されたマリア・ダ・ペーニャ法の適用を求めた。
同法の適用に関しては昨年、被害者の供述内容が後退した場合でも、第3者の証言などがあれば同法の適用が可能との判断が下っており、最終的にはフックス判事も同意の上で、同下議に対する最高裁審理が行われる事となった。
サンパウロ市では最近、付き合い始めた男性に「男性至上主義者」といった女子学生が、窓のそばに呼び出され、「頭を窓の外に突き出して同じ言葉を言ってみろ」と言われてその通りやったところ、「男性至上主義者」と言った途端に足を掴んで持ち上げられ、アパートの窓から転落、全身を強く打って骨折などの重傷を負うという事件も起きた。警察は同事件を本人の過失による転落事故と見ていたが、本人の意識が回復して恋人に投げ出されたと供述した事で、殺人未遂事件として再度捜査をやり直すという事態も生じている。(7日付エスタード・デ・サンパウロ紙より)