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【中南米トピックス】=メキシコの石油開発事業=国内外の民間参入が可能に=75年間の国の独占終焉へ

ニッケイ新聞 2013年12月17日

 メキシコの下院は12日夜、石油開発に国内外の民間企業の参入を認めるエネルギー改革法案を承認した。フォーリャ紙は、「1994年の北米貿易協定加盟に次ぐ、同国セクターの20年ぶりの大きな変化」と報じている。
 この法案は既に上院を通過しており、今後は31の州議会での審議を経てエンリケ・ぺニャ・ニエト大統領が裁可して成立する見込みだ。
 中南米ではブラジルに次ぐ経済規模を誇る同国産業の刺激を図る法案で、民間企業が独自に、あるいは国営石油企業Pemexと共同で開発することを認めるもの。この改革により、1938年から70年以上にわたる石油、ガス、電気エネルギーの開発・生産の国による独占が終焉を迎えることになる。
 20時間にも及んだ審議で、野党は「外国企業に国の資産を売り渡すことになる」と反対し、野党の某議員はなぜか下着だけの姿になって法案に反対する演説を行うなど議論が白熱したが、最終的には賛成353、反対134で可決された。
 この改革は、人口1億1700万人のうち半数が貧困層住民という同国の経済強化政策を打ち出すニエト政権による、構造改革の最初の一歩だ。政府は石油とガスの生産を増やすことで電気料金を下げたい方針で、法案可決後、ニエト大統領は「(法案は)これら資源の生産性、経済成長、雇用創出を保証するもの」とツイッターでメッセージを流している。
 ただし、民間による投資の内容が具体化し、拡大する内需に対応できるほど十分な量の石油を生産できるようになるまでは、数年を要するというのが専門家の見方だ。
 Pemexの石油生産量は、1日あたり340万バレルだった2004年から、約25%減の250万バレルまで落ちた。まだ開発されていない油田の面積でいえば世界有数だが、開発が遅れており、04年時の記録を上回るには、毎年数十億ドルを投資する必要がある。この投資が行えていないために米国からの石油や天然ガスの輸入を余儀なくされ、それに伴って国内での石油開発への投資額が不足し、競争力が失われているという悪循環に陥っているのが現状だ。
 政府としては、この法案可決によって、エクソンモービルやシェルなどの大手米国企業からの投資拡大を図り、開発を進めて生産量を拡大することによって更なる経済成長を促進したい考えだ。2012年の国内総生産は3・9%増でブラジルを超えたが、中国やインドを下回っている。
 なお、世界的に活躍する人気俳優で映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」でチェ・ゲバラを演じたガエル・ガルシア・ベルナル、同じく俳優のダニエル・ヒメネス・カチョ、エウヘニオ・デルベスらは、この法案に関する国民の意見を聞くための公聴会開催を呼びかけるキャンペーンを行っている。キャンペーンでは「国、民間、外国企業だけが得をする法案ではなく、国民全員に利益がある法案でなければならない」とのメッセージを打ち出している。(13日付フォーリャ、エスタード両紙より)