ニッケイ新聞 2013年11月6日
2012年に連邦大学で黒人、褐色、インディオなど有色人種への特別枠を設けることなどが法律で定められたが、そのような人種の違いによる機会の不平等を是正しようとする試みは、政界にも及びつつあるようだ。
下院憲政委員会(CCJ)は先月30日、黒人系議員の特別枠(cota-racial)を設ける憲法補足法案(PEC)116を承認したと同31日付の各伯字紙が報じた。
法案は今後、下院の特別委員会、本会議での2回の投票、上院での審議にかけられる。もし最終的に可決されれば下院、各州議会、連邦区の議会で適用され、法案公布から20年間有効、その後さらに20年延長される可能性がある。
もし特別枠が設置されれば、有権者は通常の投票に加え、特別枠内の議員への投票も行うことになる。立候補にあたって人種は自己申告となる。
法案では、各議会での黒人議員の特別枠は、最新の国勢調査で黒人あるいは褐色と自己申告した人の割合の3分の2に相当する数を割り当てており、その上で、全体の数の5分の1以上で、なおかつ半分以下であることとされている。下院で全体の5分の1といえば約100人に相当する。
「黒人と褐色はブラジルでは決して少数派ではない。だから国会で彼らの声を代弁する存在を保証することが必要」。法案を提出した議員の一人ルイス・アルベルト氏(PT-BA)はそう説明する。同議員によれば、選挙キャンペーンを行うための資金援助、もしくは特別枠でもなければ、黒人の候補者が選挙資金を集めて出馬するのは容易ではないという。候補者本人の欠陥というより、選挙環境、社会の風潮の問題であり、「もし候補者が黒人で女性だったらもっと条件は悪くなる」と主張する。
下院の憲政委員会こそ通過したが、先は長い。「最終的に可決されるかどうかは、国民からの圧力の具合に依存する」と言う。
今後、同法案は左派政党の議員からは支持を得られる一方、保守派議員らは強い抵抗を示すものとみられている。同議員によれば、家庭内暴力から女性を保護する目的で定められたマリア・ダ・ペーニャ法のように、話題性の高い議題の場合は国民の反応が影響する部分が大きいという。
ちなみに非政府団体の調査によれば、2010年に当選した黒人の連邦議員の数は43人で、全体のわずか8・5%。党別にみると最も多いPT(労働者党)でも14人で、その次にPMDB(民主運動党)、PRB(ブラジル共和党)でそれぞれ6人と続く。州別ではリオ、バイーア、マラニョン各州で7人ずついるのが最多だ。
ブラジル全土の黒人の州議は39人で、1059人いるうちの全体の3・7%に過ぎない。