ニッケイ新聞 2013年11月13日
ブラジル熊本県文化交流協会(田呂丸哲次会長)が創立55周年を記念し、10日にサンパウロ市の同会館で記念式典を催した。日本からは小野泰輔副知事ら県関係者や熊本日伯協会会員ら、岡本悳也(とくや)・熊本学園大学学長率いるグローバルリーダー育成派遣研修団など39人が祝福に来伯。会員はじめ、県系人の飯星ワルテル連邦下議や西本エリオサンパウロ州議、ベレン熊本県人会の島川尚三会長、サンパウロ州プロミッソンで〃移民の父〃上塚周平の墓守りをする安永忠邦さんら約250人が参集し、節目の年を祝った。
同県は移民総数25万人の約1割にあたる2万3千人を送り出し、香山六郎、中尾熊喜、間部学ら数々の有名人を輩出した。県人会の会員数は約500人で、近年は増加傾向にある。
式典は、日下野良武理事長によるユーモアある司会でスムーズに進行。初めに小山田祥雄実行委員長による開会宣言、両国歌斉唱、開拓先駆者への黙祷が行なわれた。
挨拶に立った田呂丸会長は、「二、三、四世の時代になっても、私たちのルーツは熊本県にある。いつまでも心の故郷熊本を胸に抱いて、先祖の血に恥じないよう生きていきたい」と故郷への思いを露わにした。
小野副知事は「新幹線が開通した時は、58人もの訪問団が来て県民を元気付けてくれた。これからも本県との連絡役を担ってほしい」との蒲島郁夫知事の挨拶を代読した。熊本日伯協会慶祝訪問団の荒牧邦三団長も、「長年の友好交流をこの目でしっかり確かめ、県の皆に伝えたい」と熱く語った。
藤川隆夫県議会議長、齋藤聰市議会議長、在聖総領事館の佐野浩明首席領事、岡本学長らもあいさつを述べた。
続いて高齢者および功労者、同県人会元会長の柳森優、嶋田秀生さんへの表彰があり、記念品の交換が行なわれた。飯星連邦下議と西本州議からは、田呂丸会長にプラッカが贈呈された。
長瀬隆元会長の閉会宣言で式典の幕が閉じると、『熊本・ブラジルふれあい懇親会』として昼食会が開かれた。
出席者らは食事を楽しみながら歓談し、ロンドリーナ熊本県人会の踊りなど余興を堪能。グループ「リズム体操熊本」のショーでは、参加者も一体となって「おてもやんサンバ」などを踊り、親睦のひと時を過ごした。
会員歴30年以上、婦人部長もつとめた嶋田鶴枝さん(87、城南市)は「日本から来る人とお話すると、故郷が懐かしくなる」と目を細めた。
日下野氏の熱意に打たれ=リーダー育成研修団実現
研修団の10人の学生は社団法人「大学コンソーシアム熊本」の会員校である熊本学園大学、九州ルーテル学院大学、熊本大学に通う学生たちだ。同団体は高等教育機関の充実・発展をめざすもので、県内の大学16校中14校が所属している。
県費留学生は50年ほど続いているが、予算の問題もあって定員は一人だけ。危機感を抱いていた日下野さん(70、熊本)は、「若い新しい国を体で感じ、日本がどういう風に生きていくべきかを考えてほしい」との思いを岡本学長に伝えた。
同学園大卒業生の日下野さんの熱意に打たれた岡本学長は、コンソーシアムに訪問団派遣を提案した。海外派遣は一度も経験がなかった同団体だが、すぐに合意に至ったという。
各学生の費用は、学生が通う各大学が支援。九州ルーテル学院大は希望者を募ったが、熊本学園と熊本大は一芸に秀でた学生や成績優秀者、留学経験のある学生などを指名した。
岡本学長(71、福岡)は、「頻度はまだ分からないが続けたい。来年は夏休みに実施して、人数も増やせれば。海外に出るという経験は成長に欠かせない」と力説した。
片山ひかるさん(22、熊本)は「昔通っていた静岡県の小学校にブラジル人がいた。ブラジル人の国民性にとても興味がある」と意気揚々と語った。
渡辺健太さん(22、熊本)は「サッカーが大好きで移民にも興味があったので、ブラジルは一番行ってみたい国だった。将来教師になったとき、子どもたちにブラジルのことを伝えていきたい」と目を輝かせた。