ニッケイ新聞 2013年11月19日
チリで17日、大統領選挙の一次投票が行われ、元大統領(2006〜2010年)のミチェル・バチェレ氏(チリ社会党)が圧倒的リードのまま、対立候補のエヴェリン・マッテイ氏(独立民主連合)と共に12月に行なわれる決戦投票に進んだ。18日付伯字紙が報じている。
現職のセバスチャン・ピニェラ大統領(国民革新党)の任期満了に伴う大統領選挙(同国は連続再選を認めていない)で首位に立ったのは、ピニェラ氏の前任者だったバチェレ氏だ。同氏は一次投票で46・74%と過半数近い票を獲得したが、過半数には至らなかったため、結果は12月15日の決選投票に持ち越しとなった。
2位になったのは、現在の与党の右派連合「チリのための同盟」の候補で、ピニェラ政権の元労働相であるエヴェリン・マッテイ候補(独立民主同盟)で、25・02%を獲得して、決戦投票進出を決めた。
チリでは1990年にアウグスト・ピノチェト政権が17年に渡る独裁政権に終止符を打った後、バチェレ氏も所属する中道左派連合「コンセルタシオン・デモクラシア」が20年に渡って政権を担っていたが、2010年に20年ぶりに右派連合に政権が渡っていた。ピニェラ政権下のチリは10年から3年連続で5%以上の経済成長を遂げたが、同大統領の国民からの人気は上がらないまま、バチェレ氏再登板を望む声が強かった。
バチェレ氏は公立学校の無料化や税制改革、新憲法制定などを公約に掲げていた。一方マッテイ氏は、「バチェレ氏の改革が実行されれば大規模な失業が起き、中小企業が打撃を受ける」と批判してきた。だが、国民の中には経済よりも社会変革を求める声が強く、投票日の17日にも30人の高校生が、現政権の招いた貧富格差に抗議するデモを行なっていた。
今回の選挙は有権者の投票の義務化が解かれ、自由意志での投票となったため、1300万人の有権者のうち630万人しか投票を行なわなかった。今回の投票で3位(10・93%)だった急進左派のマルコ・エンリケ・オミナミ氏(進歩党)と、無所属ながら10・13%を獲得して話題となったフランコ・パリシ氏は既にバチェレ氏支持を表明している。
なお今回のバチェレ氏とマッテイ氏の対決は、女性候補同士ということに加え、共に軍部上層部だった父親を持ち、互いに幼なじみだったということでも話題を呼んでいた。