ニッケイ新聞 2013年11月20日
ブラジル・サッカー界には、クラブ・チームのファンが楽しみにしている大会が三つある。一番人気は南米一を競うリベルタドーレス杯。もうひとつは「ブラジル一」を競い合う全国選手権(ブラジレイロン)。だが、1960年代からはじまったブラジレイロンよりもはるかに長い歴史を誇る、各州による選手権も根強い人気を誇っている。
特に「パウリスタン」の愛称で知られるサンパウロ州選手権は1902年スタートの由緒ある大会で、コリンチャンス、サンパウロ、パルメイラス、サントスといった、ブラジル国内においてもトップクラスの人気を誇るチームが地元で優勝を競い合う大会だけに、ファンの盛り上がりも熱い。
州の選手権といっても、サンパウロ州には200以上のチームが存在する。それらのチームがレベル別に四つのリーグに分かれて戦うが、注目はやはり「ビッグ4」と呼ばれるコリンチャンス、サンパウロ、パルメイラス、サントスの4チームが所属する1部リーグだ。
この1部リーグには20チームが所属する。その20チームの中には、全国選手権では4部リーグ以下の実績のないチームの姿もまざっているが、そうした実績に劣るチームが、勢いで上位のチームを負かしたりすることもあるのが州選手権の面白いところ。事実、現在全国選手権1部のポルトゲーザは、2012年のサンパウロ州選手権では絶不調だったため、13年のサンパウロ州選手権を2部で戦うという不名誉に甘んじたりもしている。
そうした「番狂わせ」が楽しみでもあるサンパウロ州選手権ではあるが、18日に発表されたルール改正で、そうしたスリルが少し抑えられる可能性が出てきた。
通年は、20チームによるリーグ総当たり戦(全19試合制)で、そのリーグで上位8チームに入ったチームがトーナメントに進出し優勝を競うシステムだった。
だが、14年1月18日からの州選手権では20チームを四つに分け、5チームの間の成績で優勝を争う。しかも、同じグループに属する他の4チームとは対戦せず、他のグループの15チームと対戦(全15試合制)することになる。
これは、「年間の試合数が多すぎる」というブラジル・サッカー界内部からの苦情に対応するために4試合分削るための処置のようだ。選手の体調を考えるとそれは良い対策ではある。
だが、この四つのグループは、いわゆる「ビッグ4」を筆頭にして分けられている。つまり、グループの中でコリンチャンスやパルメイラスが同時に所属することはなく、この「ビッグ4」がグループ内の1位になりやすいように作ってあるのだ。
しかも、グループ内で2位までのチームが、8チームによるトーナメントに進めるため、「ビッグ4」のチームはどんなにしくじっても、2位までに入れれば自動的にトーナメントまでいけるシステムだ。
「下克上」の要素には若干欠け、その分ややスリルが減った来年のサンパウロ州選手権。「大波乱」は8強トーナメントに期待することになりそうだ。(19日付アゴラ紙より)