ニッケイ新聞 2013年11月22日
連邦検察庁と最高裁は、メンサロン裁判の刑執行を逃れるべくイタリアへ逃亡した元ブラジル銀行マーケティング担当理事のエンリケ・ピゾラット被告の身柄引渡をイタリア側に求めているが、同国側が難色を示している。19〜21日付伯字紙が報じている。
ピゾラット被告は公金横領やマネー・ロンダリング、収賄の罪で12年7カ月の実刑判決を受け、13日の最高裁での判決で刑の即時執行を言い渡されていた16人の被告の中の1人だ。
同被告は、15日に住居のあるリオ州の連邦警察署に出頭し、翌16日からブラジリアの刑務所で刑に服さねばならない人物のひとりだが、刑執行命令より前にイタリアに渡っていた。
ピゾラット被告は9月4日に、昨年のメンサロン裁判で受けた判決の上告を却下されたが、イタリアへの出国は9月7日以降に行われたと見られている。出国を手伝った友人によると、同被告はリオからパラグアイとの国境近くまで友人の車で行き、歩いてパラグアイに入国したという。メンサロン裁判後、同被告のパスポートは没収されていたが、南米共同市場加盟国同士の国境は、身分証明書(RG)のみで出入国が可能だ。
パラグアイ側で待っていた別の知人の車に乗ったピゾラット被告は、そのままアルゼンチンへと向かった。アルゼンチンの空港は、もうひとつの国籍であるイタリアのパスポートを提示して出国を果たしたという。
同氏の行方はイタリア国内でもつかめていないが、友人によると、イタリア国内でのメンサロン裁判を希望しているという。同被告は、自身が参加した2002年大統領選でのルーラ候補のキャンペーン(この選挙に勝利し大統領に就任)や、郵便局汚職の議会調査委員会の資料など、九つのテーマの文書約1千頁分をペン・ドライブに保存して持ち出したという。
19日、連邦検察庁は最高裁に対し、法務省がイタリアに対し同被告の身柄の引き渡しを要求するための許可を求めた。この身柄引き渡し要求は1989年にブラジルとイタリアの両国間で決めた協約に従ったものだ。同被告はイタリア国籍を持っているので、連邦検察庁は身柄引き渡しがかなわない場合、「イタリアでメンサロン裁判を行なうこと」「イタリアで刑執行を実行すること」も合わせて要求している。
同件は最高裁も問題視しており、イタリアにも圧力をかけはじめているが、イタリア側はこの要求に難色を示している。それは、同被告はイタリア国籍こそ所有しているものの、事件を起こしたのはヨーロッパ圏内でないため、要求を受けることが出来ないという。
また、ピゾラット被告は毎月2万5千レアルの年金を受けている。この額はイタリアで受け取れば同国の平均給与815ユーロの約10倍にあたる8千ユーロになるが、年金はブラジルの口座に振り込まれる。検察庁は年金の支払いは国外逃亡後も停止されないとしているが、罰金の徴収方法などは問題となりそうだ。