ニッケイ新聞 2013年10月1日
9月最終週、国内外のニュースを幅広く扱い、ブラジルで最も購買者の多い週刊誌の一つであるヴェージャ誌が45周年を迎え、現在その特集号が発売されている。
ヴェージャ誌は、1968年9月、ブラジル最大手の出版社、アブリル出版から発売された。ときは軍事政権の真っ只中で、発売初年の12月18日付同誌では、軍政下に出された法令中最も残酷とされ、軍や政府、議会から一切の非同調者を追放するために採択された軍政令第5号(AI—5)の通過を、空席だらけとなった議会の写真と共に報じた。今回の特集号は同誌の過去45年の特集記事からの抜粋も交えて構成されており、ブラジルに関する書下ろしの最初は、このAI—5に関する記事からはじまっている。
この45年間、ブラジルで起きた歴史的事件の中にはヴェージャ誌の報道に端を発するものも決して少なくない。1992年5月27日付号では、当時のフェルナンド・コーロル大統領の実弟ペドロ氏が同大統領の金庫番だったPCファリアス氏の贈収賄疑惑を暴露し、前代未聞となる現職の大統領罷免のきっかけとなった。また、2005年5月15日号では、ブラジル労働党(PTB)のロベルト・ジェフェルソン党首が、労働者党(PT)の官房長官や党首が中心となり、議会での連邦政府への支持と引き換えに政党党首や下院議員に毎月贈賄を行なっていたことを暴露。それは「ブラジル史上最大の政治スキャンダル」とされる、メンサロン事件告発に発展した。今回の特集号ではこれらの記事もしっかり掲載されている。こうした独占スクープの多さでは、TVグRオーボ局の報道番組「ファンタスチコ」と双璧をなす。
また、今回の号で興味深い記事のひとつに、その後に大統領となったルーラ氏が、大統領に就任する24年前の1979年に、労働組合のリーダーとしてサンパウロ市郊外のABC地区の大規模デモを率先した責任で辞任に追い込まれた、というものがある。同氏がPTを結党するのは、この翌年のこととなる。
この他には、ブラジルが生んだF1の名レーサー、アイルトン・セナや、民政移管後初の大統領になるはずだったが、1985年3月に就任できないままに世を去ったタンクレード・ネーヴェス氏の死亡記事などが目を引く。
また、国際問題や女性の生き方の変化、同性愛、インターネット、地球温暖化、森林伐採問題など、普段から同誌が展開している社会現象に関する印象深い記事も数多く掲載されている。
今回の特集号は通常の雑誌サイズで290ページの装丁となっている。