ニッケイ新聞 2013年10月1日
スペインのザラ(ZARA)に遅れを取ること15年。満を持してか、米国の衣料小売業最大手「GAP」が9月26日、ブラジルに第一号店をオープンした。
同社は設立が1969年で、現在世界42カ国で3万4千店舗を展開する。マイアミやニューヨークのアウトレットを訪れるブラジル人の間では人気だが、ラテンアメリカでは20店舗と数が少なく、3年前にチリに第一号店を開いたのが最初だ。
「ラテンアメリカでの動きはブラジルへの上陸のための単なる〃準備運動〃だった」と話すのは、同社のステファン・ラバン上級副社長(SVP)。同社では08年のリーマンショック以降不調にあえぎ、09年の純売上高は142億ドルまで落ち込んだ。昨年は157億ドルまで回復したが、それでも10年前よりも低い数字となっており、新中間層の台頭に象徴されるブラジル人の購買力に期待をかけている。
長期計画の詳細は明らかにされていないが、業界筋によれば5年で15店舗開設とされ、来年4月までには4店(サンパウロに2店、ポルト・アレグレ、リオに1店ずつ)を出す方針だ。「ブラジルは税金が高いので、商品の質に見合わないほど高額にならないよう、マージンを減らす」としているが、それでも米国で売っている値段よりも最大40%まで高くなるという。
実際のオペレーションは、当地でLuigi Bertolli、Cori、Emmeなどの名前で100店舗を有するGEP社とパートナーシップを組み、同社に委託をする。国外からの商品買い付けの経験も豊富な同社は、商品の50%をアジアから買い付けている。同社は今後、米国までGAPの買い付けに行き、同時にバナナ・リパブリックなどGAPの他ブランドの商品も取り寄せることが将来的に可能になるという。
小売業専門家のジュリオ・タカノ氏によれば、オペレーションを地元業者に委託したのは、GAPが一日も速く当地で成長するための戦略と考えられる。GEP社はブラジルの税制に精通し、ショッピングセンターを経営する会社との関係も良好だからだ。ブラジルコストで苦戦を強いられているザラや英国のトップショップなどとの差別化を図りたいという考えのようだが、どこまで拡大できるか、今後が注目される。(26日付エスタード紙より)