ニッケイ新聞 2013年10月5日
毎年10月半ばにドイツのフランクフルトで行われる、世界最大の書籍の見本市「フランクフルト・ブックフェア」。出版社や著者が書籍の発売発表などを行う重要なイベントで、世界中から出版社やマルチメディア業者が集まって版権やライセンスの取引などが行われるほか、国別のブースもあり国ごとの出版文化も紹介される。
今年は9〜13日に開かれるが、今回のテーマ国はブラジル。文化省は3月に国内の作家70人を選出したが、開催1週間を切った今になり、国外で最も売れているパウロ・コエーリョが参加を見合わせると発表した。
パウロ・コエーリョはドイツの有力紙「Die Welt」の取材に答えており、そこで「その選ばれた70人が全員作家かどうかが疑わしい。20人くらいしか名前を知らない。友達の友達、などではないのか。コネだ」と話しており、不参加の理由については「自分達の国の文学を代表する作家を選ばなければならないのに、その選出基準などが明確ではなく、納得できないから」とのこと。
「多くの作家仲間と話しをしたが、誰も招待されていなかった。招待されるように努力もしたが、ダメだった。このようなイベントに国が選んだ作家の一人として招待されるのは私の夢だったから、難しい決断だったが、抗議の意味を込め、フランクフルトには行かない」と話している。
パウロ・コエーリョが、文化省からは招かれていないと名前を挙げた作家らはみな、大衆文学で名を挙げている作家で、その作品は複数の国で翻訳されている。
イベントのプログラム実施を担当する一人でキュレーターのマヌエル・ダ・コスタ・ピント氏は、まだ正式には聞いていないとしたうえで、「もし本当なら残念。ブラジルで一番売れている作家は、こういうイベントへの参加は必須」とコメントしている。
「ブラジル人読者の頭に浮かぶ多くの作家の名前がリストにないことは、ブラジル政府が、ブラジルの文学を世界にどのように認識されたいかを表している」。リストから外れた大衆文学作家のラファエル・ドラコンはそう話す。
ピント氏は、作家を選出した基準の一つは、「主要な文学賞を受賞していて、〃美的な質〃を持つ作家を選ぶというものだった」と説明する。選ばれた作家は小説家にとどまらず、有名漫画家のゼラルドやマウリシオ・デ・ソウザ、多くの児童作家も含まれる。
ただし、70人の中には、黒人やインディオの作家がそれぞれ1人ずつしか入っていなかったことなどから、「人種差別的」との批判がドイツのメディアから上がっており、このことについてマルタ・スプリシー文化相は今月2日、「作家の選出において、彼らの出自は規準に入っていない」と否定、「まずは作品の質が高いこと、作品がドイツ語あるいは外国語に翻訳されていることが規準。国際見本市のため、既に市場で認められている人を優先した」と説明している。(4日付フォーリャ紙電子版より)