ニッケイ新聞 2013年10月22日
今年8月以降に連邦政府が行なっていた入札事業の焦点と見られていた、ブラジル最大規模の岩塩層下油田で、リオ州南部沖に位置するサントス海盆のリブラ油田の入札が21日に波乱含みのまま行なわれた。19〜21日付伯字紙が報じている。激しい抗議行動の中、軍による厳戒態勢で守られつつ、ジウマ政権の威信をかけて入札が強行された。
リブラ油田は世界の石油需要の3〜5カ月分にあたる80〜120億バレルの埋蔵量と予想されている。これは現在ブラジルで最大埋蔵量を誇るルーラ油田の2倍近い。リブラ油田の産出量のピークは140万バレル(日産)とも見られている。2013年現在、国内全体で1日191万バレルの産出量だが、将来的にそれが加わることで、2029年には420万バレルに増加すると予測されている。
大規模な採掘計画にも関わらず、9月19日にリブラ油田に応札希望を表明した企業は、政府予想の4分の1、わずか11社に過ぎなかった。その理由は、同油田に関するブラジル側の準備の遅れに加え、最大の問題は同油田のオペレーターがペトロブラスと決まっており、今回落札する共同経営企業に対して30%分の出資負担を負う義務を持っていることだ。ペトロブラスを通してブラジル政府からの介入を受けることを嫌がった世界的な大手石油会社の米国エクソン、英国BPなどが手を引いた。
応札希望社11社のうち、英国のシェル社とインドのONGC社、仏トータル社が組んだ企業体や、スペインのレプソルと中国のシノペックが組んだそれは断念したとの報もあり、実質的にはペトロブラスと中国の中国海洋石油総公司(CNOOC)と中国石油天然気集団(CNPC)の組んだ一つのグループしか興味を示していないとの報道もある。それゆえ、入札中止を求める声も目立っていた。
ブラジル政府としては、サンパウロ州〜リオ間の高速鉄道(TAV)やコンフィンス空港(ミナス・ジェライス州)や国道262号線といった大規模入札がみな延期となり、見込んでいた外資財源確保が難しくなっている。そのため政府はリブラ油田の入札を是が非でも実現させたい意向で、21日の入札も強行した。
政府のこの態度に対し、全国的な規模で入札反対運動が起きた。連邦総弁護庁(AGU)の発表では、18日までに入札差し止めを求めた訴状が19件寄せられ、そのうちの7件は既に審議の末、却下となった。
この訴状の主はペトロブラスのガス・資源部の元部長のイウド・サウエル氏や民主運動党(PMDB)のロベルト・レキオン上院議員、社会経済開発銀行(BNDES)のカルロス・レッサ元頭取などだ。入札が不公平だとか、入札によって国家が被る損益を憂慮して反対した。サウエル氏によると損益は1768〜3313億レアルにまでなりうるとする。
この入札で巨額の負担金を負うペトロブラス内部でも従業員の90%以上が、石労統一連盟(FUP)や中央労組(CUT)と共に入札反対の抗議行動を17日から起こしている。政府はこの抗議行動を想定し、入札会場のリオ市のウインザー・バラ・ホテルに陸軍を配置し厳戒態勢を敷いた。 落札は21日午後3時40分頃判明し、ペトロブラス、CNOOC、CNPC)に加え、英国のシェル、フランスのトータルの5社が落札した。