ニッケイ新聞 2013年10月22日
物々しく軍隊が警備する中、岩塩層下油田初の採掘権入札が21日に行われた。ジウマ政権がインフレ抑制のために、ペトロブラス(PB)に犠牲を強いていることも、入札を強行した背景にはあるようだ▼ブラジル内で産出される原油は質に問題があって輸出に回され、国内で消費される燃料の多くは輸入されている。輸入量に釣り合う輸出量があることを「国産化実現」という不思議な表現で表す。でもシリア内戦などの影響で原油の国際価格が高まる中、本来は輸入原価の高騰を国内のガソリン価格に転嫁しなければならなかった。だが、ジウマ政権はその分をPBに負担させ、優良企業だった同社の体質を悪化させてきたと専門家は指摘する▼来年の大統領選挙を控え、輸出も国内個人消費も伸び悩む中で、なんとか国内総生産の数字を上げたい現政権としては、外国からの大型投資に頼るしかない。そうなると、何が何でもリブラ油田の採掘権を入札してもらい、大型投資をしてもらうことで一気に数字を押し上げたい▼だが、予想されるブラジル政府の採掘事業への介入、PBが米国情報局から諜報されていたとの報道もあって、世界的な大手石油会社は二の足を踏んでいる。結局は5社で落札したが、直前まで「応札参加は中国の石油公社のみ」との報道まであった▼というのも中国は石油資源確保という国策から、採算を度外視した投資をするとみられている。と同時にPBが持つ超深海油田採掘技術をコピーする目的もあるのではとの報道もある。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」との故事もあるが、徳をするのは中国かブラジルか。ジウマ政権の腕の見せ所だ。(深)