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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年10月26日

 先ごろ、読者の方が見事なばかりの筍を編集に届けてくれた。恐らく—孟宗竹らしいのだが、有難く一本頂戴し、皮に包丁を入れ大きめの寸胴鍋で煮てから「筍ご飯」を炊き夏の味を楽しんだ。もう時計の針も一時間進めたし、寒暖計の水銀も高くなり、春の三寒四温ともお別れし、軽装に衣更えし爽やかな日々を満喫している。まだ酷暑には遠いが掛け布団も毛布が1枚、2枚と少なくなり夏の仕度が整い、そろそろ冷やし素麺だなと心を弾ませている▼そういえば、宮崎県の高千穂には「かっぽ酒」という風雅で美味な酒ある。青竹の節を抜いて酒か焼酎を入れ焚き火で炙り燗をつけたものだが、こうすると青竹の油が染み出して旨くなるのだそうだ。これは—その昔、宮崎生まれの知人がいてサンパウロのシャーカラでご馳走になったが、杯も青竹であり何とも自然の風味が濃く緑の中の美酒に酔い痴れてしまった▼竹と酒については、中国に愉快な話がある。とても昔のことだが、3世紀の頃に竹林の7賢人がおり、酒盃を手にし世への不満や政治に対する批判などを竹の山で語り清談するのを常としていた。その中に劉怜がおり「酒は一度に一石を呑み,五斗を迎え酒とする」豪酒家であり、李白の「一斗詩百篇」を上回ったと伝えられ、「天地を我が家とし、家を衣服とする」と嘯いたという▼そして—極月になると大好物の鰹がやってくる。あの白い腹部に走る青色の側線が素晴らしく美しい。三陸海岸で獲れた脂の乗った「戻り鰹」には及ばないにしても、あの赤身の刺身は格別だし、土佐や薩摩の「叩き」も冷酒にはとてもいい。(遯)