ニッケイ新聞 2013年10月30日
軍警によって27日に17歳の少年が殺害されたことへの〃報復措置〃として、武装した暴徒が9日夜、サンパウロ州とミナス州をつなぐ主要道路のフェルナン・ジーアス街道を少なくとも4時間以上封鎖し、サンパウロ市北部ジャサナー地区で一連の暴力行為を働いた。29日付フォーリャ、エスタード両紙が報じた。
抗議行動は午後6時頃、少年の遺体埋葬後に始まった。街道が両方向から封鎖されると同時に少なくともバス5台、トラック3台が放火され、武装した男らが運転手と乗客に車を降りるよう指示した。ビラ・メデイロス区ミルトン・ダ・ロッシャ大通りの商店を強奪している間に歩行者一人を銃撃し、被害者は病院に運ばれ手術を受けた。
軍警によれば、同街道を走っていた車の運転手も襲われ、軍警が制止に入った。この騒ぎで90人近くの身柄が拘束された。同街道を走行していた50歳男性は、「突然道の途中でバスが燃えているのを見た。武装した少年が前に来て銃を向け、止まるように言ってきた。他にも男たちが突然現れてトラックに石を投げ始めた。ブレーキをかけて車を降りて、走って逃げるしかなかった」と証言している。
アジェンシア・ブラジルによれば、州保安局のフェルナンド・グレラ局長はこの事態を受け、エドアルド・カルドーゾ法務相に電話をかけ、新たな破壊行為の動きを阻止すべく〃連携した対策(acao conjunta)〃を取ることで合意したという。サンパウロ州はPSDB政権なので、PT主導の連邦政府による国家警備隊の受け入れをしてこなかったが、今回はその分水嶺を越える事態となった。
暴動の引き金となったのは、17歳の高校生ドウグラス・マルチンスさんが軍警に殺害された件だ。彼はランショネッテで働く高校3年生だったが、12歳の弟と道を歩いているところを、通った車に乗っていた軍警から突然胸に銃弾を受け、病院に運ばれたがまもなく死亡した。
27日午後、遺体がジャナサー区のピニェイロス公園墓地に埋葬されたが、その死は近隣住人に深い衝撃を与え、葬儀会場から墓地までには4キロの人の列ができた。
少年を殺害した容疑で逮捕された軍警は「たまたま発砲した弾が少年に命中した。偶然だった」としているが、近隣住人は誰も偶然だったとは考えていないという。少年の母親ロサナさんは「このような形で息子を失う母親は私が最後であってほしい。でも、今のブラジルの司法を見ていると、そうはならないと思う」とコメントした。
埋葬された日の夜、ビラ・メデイロス区は軍警の行為に反発した抗議行動が、近隣住民300人によって行われた。バスや車への放火、商店強奪などが起こり、デモ隊と制圧に入った警察隊が衝突した。