ニッケイ新聞 2013年9月3日
サンパウロ州の州立校では1年間に3千人の教師が離職し、毎日平均8人の本採用教員が市立または私立校へ移るか、転職していることがエスタード紙の調べでわかった。1日付同紙によれば、低賃金、将来の見通しが立たないこと、待遇の悪さなどが主な理由だ。サンパウロ大学教育学部のロムアルド・ポルテラ教授は、この離職率を「非常に高い」とみており、州立校の深刻な状況が浮き彫りになっている。
州立校教師の数だけ見れば、過去5年間で最も離職者が多かった08年(4千人弱が離職)は20万1966人、今年は23万2902人と約3万人(15・3%)増えた。ただし公務員試験に合格した本採用教員は08年より7・4%(約10万人)減の12万800人(全体の52%)となった。臨時採用教員は21%に急増している。市立校教師は08年の5万1883人から6万1342人に約1万人(18・2%)増えており、本採用教員も5万513人が5万6674人に12%増えている。
サンパウロ州内の州立校教師の初任給は2255レで、国が定めた初任給(1567レ)よりは高いが、市立校の2600レより低い。また、実際に受け取る給与額は担当する授業数によって変わる。
マルコ・アントニオ・ウズニアンさん(30)は2012年に退職した州立校教師2969人のうちの一人だ。ウズニアンさんは、採用試験に合格後、サンパウロ市東部ビラ・カロン区の州立校に配属されたが、10時間分の授業しかとれず、生活が成り立たずに1年で退職。現在はアカデミアのインストラクターとなり、会社にも勤めている。
「10回授業をして680レアル。それ以上の選択肢は無かった」。給料の安さに加え、自身のプロジェクトを職場で実践できず、職員同士の親睦もなかったことが、離職を後押しした。
エドアルド・アマラルさん(38)は教師として8年間仕事をしてきたが、次の仕事が見つからないまま昨年4月に州立校を退職、現在は市役所に勤める。「給料だけの問題じゃない。職場環境は劣悪」と振り返る。
8月31日付エスタード紙によると、サンパウロ州政府は2011年以降、不足している教師3万4千人分の枠を埋めるための採用試験を繰り返し行っているが、今年までに採用された人は1500人にとどまっている。すなわち、100人分の求人に対し、4人しか埋まっていないということだ。
採用試験が十分に行われてこなかったことと定年になる教員が年平均5千人いることで、教員不足はさらに拍車がかかっており、当面は臨時採用の教員で埋めるしかないのが実情だ。