現在、ペトロブラスにかけられている疑惑のひとつである、不当に高い買収額がついたことで問題視されている米国テキサス州のパサデナ製油所の買収について、2006年に当時官房長官だったジウマ大統領が同製油所の買収を支持していたことが明らかとなった。大統領はこれに関し「偽造書類を元に進めてしまった」と語っている。19日付エスタード紙が報じている。
連邦警察は3月11~12日に、ペトロブラスに絡む2件の疑いに関する調査開始を発表した。ひとつはオランダの石油プラットフォームのリース企業のSBMオフショアからの収賄疑惑、もうひとつがパサデナ製油所の買収問題だ。
このパサデナ製油所の買収にペトロブラスは総額11億8千米ドルの支払いを行なっている。だが、この製油所の市場価値はせいぜい5千米ドルと見られていることから、なぜ、このように巨大な額が支払われることになったのかがかねてから問題視されていた。
疑惑の的となっているパサデナ製油所の買収過程は以下の通りだ。まず、05年にベルギーの企業アストラが4250万米ドルで同製油所を買い取った。ペトロブラスは翌06年に同製油所の株の50%の買収に乗り出したが、この時点で3億6千万米ドルをペトロブラスは支払った。このときの同社の経営審議会議長をつとめていたのがジウマ氏だ。
さらにペトロブラスは翌07年にアトラス社から残り50%の株の買い取りを求められた。ペトロブラスはそれを断ったが、アトラス社が「契約違反」を盾にペトロブラス社を訴えた。ペトロブラスも訴え返したが、10年に米国テキサスの連邦裁判所での裁判でアストラ社が勝訴し、ペトロブラスは残り50%の株価6億3900万米ドルの支払い命令を受けた。
結局この問題は、12年にペトロブラスが8億2050万レアルを払って決着した。だが、連邦会計検査院が13年に、この2社の間で不正取引があったのではないかと調査を進めていた。
エスタード紙は、06年2月の審議会でジウマ大統領が買収に賛成票を投じたことを記した議事録を入手して報じた。その会議では、当時の財務相で後に官房長官となったアントニオ・パロッシ氏や、当時の大統領府政局調整担当長官で現バイア州知事のジャック・ヴァギネル氏も賛成票を投じていた。
ジウマ大統領は、市場悪化の場合も共同経営者への利益分配することを定めた「マルリン」と、共同経営のあり方に意義を唱え、契約を破棄する際は相手の持ち株を買い取ることを定めた「プット・オプション」と呼ばれる契約条項が省かれた書類を見て賛成したと釈明、「虚偽の文書に基づいて承認してしまった」と正当化している。
ジウマ大統領は官房長官以前に資源鉱山相をつとめており、エネルギー部門には明るかった。経営審議会議長時代のジウマ氏は、重要案件は自分で中身を確認してからしか承認しなかったとエスタード紙は記している。