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薬物中毒の父親が自宅に=入院させた娘と涙の対面

ニッケイ新聞 2013年9月6日

 サンパウロ州のアラソイアバ・ダ・セーラにある薬物中毒患者の治療施設にいるレイナウド・ロッシャ・ミラさん(62)が、5日から9日までの外出許可を得て、サンパウロ市の娘の家に滞在する。
 レイナウドさんは2年以上路上生活をしていた麻薬常用者で、今年1月にサンパウロ州政府が強制入院も辞さないという政策を打ち出した後、本人の意思ではなく入院させられた患者第1号だ。
 1月21日朝、朝食を一緒にとろうと誘われ、娘のアナ・パウラさん(33)の家に戻ったレイナウドさんは、朝食の前にサトウキビの絞り汁を飲みたいと所望。父親の習慣を知っていたアナさんはこの時、睡眠薬入りの絞り汁を飲ませた。
 その頃のレイナウドさんは体のあちこちが痛むとこぼし、聴覚にも問題があった上、食事も不規則、一度家を出ると何カ月も帰ってこないという生活を繰り返していたため、アナさんは朝食後、病院に行って診てもらおうと父親を誘った。
 レイナウドさんが車で移動している間に眠り込んだのを見たアナさん達は、そのまま、サンパウロ市中央部にある飲酒喫煙麻薬対策センター(Cratod)に直行。事情を説明して、そのまま入院させてしまった。
 この時の様子は、当時の新聞も、「こうでもしなければ、父は路上で死んでしまう」というアナさんの言葉と共に報道したが、薬物中毒患者の治療施設から外出許可が出たと聞いたアナさんは、5日朝のレイナウドさんとの再会に期待と恐れをもって臨んだ。だが、レイナウドさんはアナさんとしっかりと抱擁。施設の人々にも笑顔で挨拶して車中の人となった。
 アナさんは精神科医から1人で外出させない、昔の仲間に会わせないといった注意事項を聞かされ、一抹の不安は感じてはいるが、治療開始直後の3カ月は暴力的で、向き合って話す事も出来なかった父親が、講演などにも耳を傾けるようになり、麻薬との関係を絶つ事が最善の道だと理解し始めた事を喜んでいる。(5日付グローボ局サイトより)