ニッケイ新聞 2013年9月10日
サンパウロ市北部ブラジランジアで起きた軍警一家殺害事件に関し、7、8日付伯字紙が報じた精神科医による鑑定結果などの報道に、本当にやるせない思いがした。13歳少年が8月5日未明に両親と祖母、大叔母を殺害し、学校から帰った後に自殺したという事件は多くの人を驚かせた▼鑑定によれば、 少年はプロの殺し屋が出てくるビデオゲームの世界と現実世界を混同、両親らを殺害した時は殺し屋になりきっていたが、学校から帰った時は正気に戻っており、自分のやった事を目の当たりにして後悔し、自殺したという▼軍警である両親が仕事で使う銃が身近にある上、親が銃の使い方を指導した等の要因が重なり、不治の病に冒され、幼少時から家の中にこもりがちだった少年が起こした事件といえばそれまでだ。だが、その背景にはテレビやゲームの影響など一般家庭でも見逃せない要因も入り混じっている▼ブラジルの少子化には、テレビの連続ドラマ(ノヴェーラ)に出てくる家庭の子供が1人か2人である事も影響しているといわれたのは数年前。少年が覆面を使ったりし始めたのは仮想世界と現実世界が混同していた証拠だというが、身近に居る人はこの種の変化を見落としやすいのも事実だ▼捜査はまだ未完結だが、鑑識からの報告には、少年の右手の指には髪の毛がからまっており、自殺直前に母親の髪を手櫛ですいた後、両親の方に少し体を傾けた状態で引き金を引いたとある。最後の最後に親を慕う子供の情を覗かせたという部分を読んだ時は、「父さん、母さん、ごめんね。僕も今そっちに行くからね」という声が聞こえたようで、涙を禁じえなかった。(み)