ニッケイ新聞 2013年9月12日
ブラジル移民の父として有名な水野龍。それでは沖縄移民の父が誰かご存知だろうか? 〃元年者〃に遅れること32年、初めて沖縄からハワイ移民を送り出した當山久三だ。1903年の第2回渡航では自身も船に乗り込みサトウキビ栽培や英語の習得に勤しんだ。初回移民が故郷に錦を飾ったこともあり、笠戸丸の4割を占めたブラジル含め、海外への憧れの基盤を作ったともいえそうだ▼その功績を称える「當山紀念館」が出身地の金武町にあることは知らなかった。それが解体の憂き目に遭っていることも、だ。沖縄タイムスによれば、保存を希望する署名が町民の4割近い5千に達する勢いだという。移民らの寄付金でできた同館は、移民教育なども行なわれたとか。なんと神戸の移民収容所が現役だった1935年建設なのだから驚く▼日本にある移民関係の建築物としては最古の一つではないか。様々な団体に使用された末、2000年以降は倉庫となっていた。当初は解体後、跡地に庁舎が増築される計画だったが、『存続させる会』が「歴史、建築学史的意義がある」と指摘、儀武剛町長も「議論が必要」と再考の構えを見せている▼同町長には昨年のブラジル金武町人移住100周年で取材した。過去2度来伯、今年はペルーも訪れ、町史編纂では「移民編」を担当するなど、歴史を知識と肌で知っている人物だ。金武町はHPでも〃海外雄飛の里〃を喧伝している。これを機に、町民のみならず、県系師弟らが訪沖時に移民の歴史を学べるよう、資料なども展示した館再建を目指してはどうか。当地沖縄県人、町人会が議論に参加してもいいはずだ。(剛)