ニッケイ新聞 2013年9月17日
「誰にもはばからず、大好きな車を運転して出かけられるのよ。ポンコツなんて言わないでね」—。スタイリストの仕事を辞め、5カ月前に老人ホームに入った80歳のフレイア・サウエルさんは、愛車で外出するなどの自由を満喫している。
ボーリングやショッピングなどを楽しむため、80歳になっても愛車を運転するフレイアさんは、若い時は小型機を乗り回すアマチュアのパイロットだった。
未亡人となってしばらくは孤独に耐えられず、うつ病になったというフレイアさんも、ホームに移ってからは自分を取り戻し、友人は出来たし、色々な活動もある、誰にも世話にならずに過ごせるのも良いと手放しの喜びようだ。
フレイアさんがいるのは、サンパウロ市ピニェイロス区にある1972年創設のラール・サンチアーナだ。定員120人の施設の入居料は最低7千レアル。金額は介護などの必要度によって違うが、7月に改修工事が行われ、フィンランドから輸入したフィットネスの機械なども備えた第三世代向けのスポーツジムも開設された。
サンパウロ市パライゾ地区のレジデンス・サンタカタリーナは2000年開設で、入居料は月1万2千レアル。入居者数は95人だ。
サンパウロ州コチア市のグランジャ・ヴィエナにあるレジデンス・ヴェルボ・アマルはもう少し小規模で定員14人。入居料は4800〜5500レアルだ。
近年は老人ホームに対する偏見も薄れ、ホームの方が気兼ねしなくて良いという親の意見に素直に同意する子供や家族も増えてきている。
5年前からホームに住むアナ・リルス・ギマランエスさん(87)は、「五つ星ホテルにいる気分よ」と屈託がない。91歳のエルザ・ゴウヴェイア・マルケスさんは、息子の世話にならなくて済むよう、ホームの中で働いているが、息子や孫とはeメールやフェイスブックで毎日のように連絡を取る。借家として貸し出している自宅の状態を不動産屋に確認するのも、必要に応じて銀行とやり取りをするのも全部自分で、「お金の事も仕事の事も全部電話で解決している。最後の結論は私が下すの」と胸を張っている。(15日付エスタード・デ・サンパウロ紙より)