ニッケイ新聞 2013年9月17日
自分自身が諜報活動の対象となっていた疑惑についての説明が米国側からなされなかったことで、ジウマ大統領が10月に予定していたワシントン訪問をキャンセルするとの見方が強まっている。15日付伯字紙が報じている。
米国の国家安全保障局(NSA)によるブラジルへの諜報活動は、リオ在住の米国人ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド氏が元NSA情報局員だったエドワード・スノーデン氏から入手した情報を報道したことで表面化したが、1日のTVグローボ局の報道番組「ファンタスチコ」で、諜報活動の範囲がジウマ大統領にまで及んでいたことが発覚した。
ジウマ大統領は、米国が自分やその側近に対しても諜報活動を行っていたことに憤ると同時に、米国が「テロから世界を守る」を建前としつつ、ペトロブラスなどの経済活動に対しても諜報活動を行っていたことをさらに問題視していた。ジウマ氏は今月初旬にロシアのサンクトペテルブルグで行われたG20の際、米国のオバマ大統領に諜報活動の疑惑に対して説明するよう求めていた。
その後、ルイス・アルベルト・フィゲイレド外相が11日にワシントンに招かれ、スーザン・ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官から、同問題についての説明を受けた。ライス氏はNSAの行動を波紋の残るものとして受け止めたものの米国とブラジルの関係性は正当なものと発言した。
この後、ジウマ大統領は13日に労働者党(PT)の党幹部会議に参加。同会議にはルーラ前大統領やルイ・ファルコン党首、アロイジオ・メルカダンテ教育相、ジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法相なども参加しており、この席でジウマ氏は10月23日に予定していたワシントン行きを中止する意向をさらに強めたと見られる。米国訪問拒否はルーラ氏も強く支持しているようだ。
ブラジル大統領のホワイトハウス訪問は、1995年のフェルナンド・エンリケ・カルドーゾ大統領以来18年間、行われていない。ワシントン訪問は世界各国にとり、米国との戦略的な関係性を強める行動の一つだ。
ジウマ大統領はフィゲイレド外相ときょう17日に会議を行う予定で、そこでも意向が変わらなければ、ワシントン行きの中止が正式に発表されるものと見られている。
だが、ワシントン行きの持つ外交関係上の意義を重要視するブラジル外務省は、なんとか大統領を翻意できないかと願っている。24日にはニューヨークで国連総会があり、開会式でジウマ、オバマ両大統領が演説を行う予定でいる。ジウマ大統領自身も、その際にオバマ大統領が何らかの形で説得を試みるであろうことは予想しているという。
また、15日付フォーリャ紙によると、ブラジリアでは少なくとも毎週1度、米国の中央情報局(CIA)の職員2人が連邦警察のビルに出入りし、接触を持っていることをブラジルの警察側も認めているという。