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USP日本語学科50周年=日文研 記念シンポで祝う=当地大学では初設置=「研究の発展に寄与」

ニッケイ新聞 2013年9月21日

 サンパウロ総合大学(USP)の日本語・日本文学講座が創設50周年を迎え、同大日本文化研究所主催の国際シンポジウムが11日から13日の3日間、同所のケンスケ・タマイ講堂で開催された。11日午前に行われた開会式には教授陣や学生、関係者ら約150人が出席し、日本研究の発展に寄与し、当地の日本研究の方向付けや後継者の育成を行う人材を輩出してきた機関の節目の年を祝い、意義を確認し合った。

 ブラジル初の日本語・文学コースとして1963年にUSPに創設された。同コースの支援や伯公教育における日本語教師、日本研究者の養成を目的に、故鈴木梯一氏らが中心になって働きかけて、移民60周年の68年に「日本文化研究所」が組織された。ブラジルでは大学など高等研究機関での日本研究の基盤ができ始めた時代で、同所はその先駆け的存在となった。
 76年、学内に現在の「日本文化館」(Casa da Cultura Japonesa)が建設され、教育や研究、日本文化普及活動の場となり、81年にはブラジル内唯一の日本研究専門誌『Estudos Japoneses』の発刊を始めた。
 1996年には同大に日本語、日本文学、日本文化大学院コース(修士課程のみ)がブラジルで初めて創設され、研究者を育成し、国内で80年代以降に創設され始めた他大学の日本語コースに教員、研究者を送り込んだ。研究者の横のつながりを強めるためのシンポジウム、セミナーにも主体的に関わってきた。
 現在までの大学院修了者は37人。その多くが国内の大学で教育研究活動に従事し、現在の在学者は34人に上る。
 「大学院を含めれば、(同学科で)学ぶ人は350人ほど」と話す松原礼子教授(二世)は、2002年から同大で教鞭をとる。「今後は非日系にマッチした教授法を考え、学生の日本語読解力をつけることに力を入れたい。博士課程の設置も目標」と課題と展望を説明した。
 今後力を入れるべき二本柱として、大学内で地位を上げるための研究活動、社会貢献という意味で、公機関の日本語講師養成を行う日本語教育専門講座の開講を上げる。「教員数が少ないですが、大きな仕事。何とかやっていきたい」と意欲的に語った。

 脇坂氏ら歴代教授を顕彰

 「懐かしくて涙が出そうです」。開会式で顕彰された歴代の8教授の一人、脇坂ジェニさん(87、二世)は本紙の取材に答え、そう声を詰まらせた。4人の子供の母親として学問とは無縁の世界にいたが、72年、同大の公開講座に足を運び源氏物語に関する講義を聴いて感化された。「テキストが全部ひらがなで書いてあった。先生の音読には抑揚があって、聞くだけで意味が理解できた。それにとても感動しました」と思い出す。
 古典文学に深い関心を抱き、同学科に入学。学部生時代から教鞭をとり始めた。87年に博士号を取得し、同時に所長に就任、96年に退官した。「研究者の養成機関として重要な役割がある。数は少ないですが、卒業生は国内の他大学の日本語学科で教鞭をとっている人も多い」と意義を強調した。