ニッケイ新聞 2013年9月25日
アフリカ南部のジンバブエ共和国では独立以来、ロバート・ムガベ大統領が33年も政権の座にあり、事実上独裁体制が敷かれている状態だ。ムガベ大統領は今年の8月の選挙でも再選され、6期目に突入しているが、ブラジルは社会経済開発銀行(BNDES)から、同政権に対して約9800万ドルの借款供与を行おうとしている。
これは、ブラジルの農業開発省が行うプログラム「世界により多くの食糧を(Mais Alimentos Internacional)」の一環だ。ジンバブエ政府は、この資金でブラジル製の農機具(トラクター、灌漑や埋め立てのための機材一式など)を購入し、自国の農家に提供することになっている。
このプログラムは、相手国の農家に技術移転を行う方法として位置づけられ、ブラジル企業の輸出を助けるという目的もある。だが、一部人権保護団体が借款のリスクを指摘しているのは、低金利の長期返済という優遇措置を施した借款供与に対する返済能力以上に、長期にわたる独裁政権で、汚職や人権侵害が横行していることだ。
ムガベ政権は、2000年から白人が所有する大農場を補償金なしで没収し、その多くを農業経験のない同盟の政治家に与えるという〃農地改革〃を行っており、その結果、農産物の収穫量は激減。国は食糧危機に陥り、国外からの輸入や資金援助に頼らざるを得ない状況が生まれている。しかも、国内の農家の大半は自身の名義の土地を持たないため、農機具などを購入するための融資なども受けられない状況にある。
同国に借款供与される資金は農家に直接供与されるわけではなく、あくまでも政府間の供与となる。同プログラムのディレクター、マルコ・アントニオ・ヴィアナ氏によれば、ジンバブエ政府は農機具などを購入し、家族農家に提供することを約束しているが、人権団体などが懸念するのは、同国政府が本当に農機具などの購入に資金を使用するか否かと、農機具などがそれを本当に必要としている家族農家の手に渡るかという点だ。
「世界により多くの食糧を」プログラムではジンバブエのほか、セネガルとガーナにそれぞれ9500万ドル、キューバには2億1千万ドルを借款供与することになっている。同プログラム向けの融資のために認められた金額の合計は、4億7千万ドルにも及ぶ。
ヴィアナ氏は、「このプログラムは支援を受ける国の国民が飢餓状態から脱出するのを助けることが重要。(ジンバブエに)問題があることは認識しているが、だからといって同国を支援対象国から除外するわけにはいかない」と説明する。農業開発省は横流しがなされないように監視を行うという。(21日付フォーリャ紙より)