ニッケイ新聞 2013年9月27日
26日、中南米の音楽の祭典「ラテン・グラミー賞」のノミネートが発表され、ブラジルの作品もノミネートされた。ラテン・ミュージックの世界ではたしかに大きな位置付けの賞だが、一体このラテン・グラミーとは何なのだろう。
ラテン・グラミーは、アメリカでメキシコやカリブ海の島からの移民が増えたことでラテン・ミュージックの人気が急上昇したことを受け、2000年からはじまった賞だ。アメリカ最大の音楽賞「グラミー賞」の兄弟分にあたる賞ということもあり、毎年11月に授賞式があるとその結果は世界中に報道され、それなりに権威のある賞とみなされている。同賞の対象は、中南米やアメリカ領のプエルトリコはもちろんだが、言語の関係でスペインやポルトガルのアーティストまでその範囲に含まれている。
中南米文化を世界的にアピールする場のひとつと考えると意義のある同賞だが、ブラジル音楽界からの視点で見ると、不自然なところもある。なぜなら、この賞は「中南米」の視点で見たものではなく、「アメリカ」の視点で見たものだからだ。授賞式が開催されるのは毎年必ずアメリカ。つまり、「アメリカに在住する中南米移民」に人気があることが大前提とされるのだ。
そうなると圧倒的に有利になるのはプエルトリコやメキシコ、コロンビアなど、アメリカに比較的近く移民も多い国だ。こういう国々の音楽的感性にあい、かつスペイン語の音楽がどうしても有利になり、地理的に遠くポルトガル語のブラジルは不利になる。
ラテン・グラミーではブラジルが南米最大の国であることを考慮して、ブラジル音楽だけに特化した部門が7部門設けられているが、そこではブラジルのアーティストのみが賞を競い、他の国のアーティストは交わらない。さらに「アメリカでの視点」に頼っているために情報が古く、ノミネートされるアーティストも「なぜ今ごろこの人が?」というものも少なくない。
総合部門になるとブラジル勢は完全に蚊帳の外だ。過去13年間、この賞でブラジル勢が受賞したのは2004年のマリア・リタの新人賞、05年のイヴァン・リンスの最優秀アルバムの二つしかない。
今年の総合部門にノミネートされたブラジルのアーティストは計3人。大ベテラン、カエターノ・ヴェローゾの「ウン・アブラソッソ(Um Abraco)」が最優秀レコードと最優秀楽曲、「ブラジル音楽界のレイ(王)」ことロベルト・カルロスが昨年久々に出した大ヒット曲「エッセ・カラ・ソウ・エウ(Esse Cara Sou Eu)」が最優秀楽曲、そしてスーパーマーケット「ポン・デ・アスーカル」のTVコマーシャルのキャラクターとして注目を集めている、喜劇女優兼フォーク歌手のクラリセ・ファウコン(23)が最優秀新人にそれぞれノミネートされている。
ラテン・グラミーの授賞式は11月21日、アメリカのラスヴェガスで行われる。