ニッケイ新聞 2013年9月27日
夫からの暴行で障害を負った女性の名を冠した「マリア・ダ・ペーニャ法」が2006年8月に発効してから7年経つが、発効後の現在も暴行を受けて死亡する女性の割合は減っていないと26日付エスタード紙などが報じた。
同法は夫から殺されそうになって下半身不随となった女性の名前を取ったもので、夫や恋人、時には子供による暴行から女性を保護し、刑罰を重くした法律だ。
25日に発表された応用経済研究院(Ipea)の調査結果によれば、2011年の場合、家庭内暴力など異性からの暴行による女性の死者は10万人当たり5・43人で、2001年の5・41人を上回った。 法制定前と後のデータを比較すると、2007〜2011年の平均は10万人あたり5・22人、2009〜11年の平均は5・82人とむしろ悪化しており、同法の効力は期待されたほどではなかったといえそうだ。発効された翌年の07年は前年の5・02人から4・74人と減ったが、翌年からは再び上昇傾向を示し、2010年から頭打ちとなった。
8月29日には、ゴイアス州で結婚生活に終止符を打った女性が別れた夫に襲われ、両目をナイフで刺されて片目を失明する事件が起きるなど、暴力行為の被害を受ける女性は5分に1人で、09年から11年に異性から暴行されて死亡した女性の数は年平均5664人。月472人、1日なら15・52人、すなわち1時間半に1人が死亡している計算になる。さらに、異性から暴行を受けて死亡した女性の60%は黒人、死者の半数以上は20〜39歳だったという。
09〜11年のデータを地域別に見ると、北東部での被害が最も大きく、10万人につき6・90人の女性が死亡している。その次は中西部(6・86人)で、北部(6・42人)、南西部(5・14人)、南部(5・08人)と続く。
州別ではエスピリトサント州が11・24人と最も多く、最も低いのがピアウイ州の2・71人だった。サンパウロ州は25番目で3・74人だった。
Ipeaは2001年から11年の間に死亡した女性の数は5万人に上るとみており、ラテンアメリカ・カリブ海地域の女性の人権保護委員会(Cladem)コーディネーター、イングリジ・レアォンさんは「法律は重要な手段だが、唯一の手立てではない。暴力を認めないような文化を醸成するための教育強化などを社会に働きかける必要がある」と話している。