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〃3年問題〃がついに決着=来月15日から入国許可

ニッケイ新聞 2013年9月28日

 日本政府は27日、2009年から国内の日系人を対象に1年間実施した「帰国支援事業」を利用して帰国した日系人の再入国を、10月15日から許可することを発表した。
 発表資料によれば、再入国をしようとする日系人の安定的生活を確保するため、査証申請の際に、事前に企業と契約を結び、1年以上の雇用期間のある「雇用契約書」の写しの提出が条件となる。同事業を利用して帰国した人は計2万1675人に上り、うちブラジル国籍者は全体の9割以上に上る2万53人だった。
 事業開始当初は「日系人の身分に基づく再入国は認めない」という条件が付されており、国内最大級の集住地である静岡県浜松市の鈴木康友市長が「日系人として再入国できないのは問題だ」と記者会見で意見を述べ、ブラジルのカルロス・ルッピ労働大臣(当時)が「施策の無効化」を求める公文書を送るまでに発展した。
 これを受け日本政府は同年5月、「09年4月から原則として3年をめどにし、今後の経済・雇用情勢の動向等を考慮して見直しを行う」としたものの、4年半が経過した現在まで、政府側の具体的な動きはなかった。
 サンパウロ市のCIATE(国外就労者情報援護センター)で開催されるコラボラドーレス会議出席のため来伯した厚生労働省職業安定局の堀井奈津子・外国人雇用対策課長は、今年7月時点で有効求人倍率が0・94倍、完全失業率が3・8%と2008年のリーマンショック以前の水準に戻りつつあることを挙げ、「雇用情勢の改善が進んでいることを考慮した結果」と説明する。
 「日本のリアルな雇用状況を広く公表していきたい」と話しており、主にCIATEを通じて再入国希望者への情報提供に力を入れたい考えだ。また、「日本語能力があれば職種の幅が広がる」と続けた。
 今年5月には、支援を受けて帰国した日系人女性が再入国の認可が下りなかったことを不服として国を相手取り提訴、決着を前に名古屋入管から在留許可認定証を付与されていた。
 しかし政府側は、この女性が支援を受けた当時未成年であり、帰国後結婚した日系人男性が訪日を希望して査証を獲得していた「定住者の妻」という身分を考慮したとし、〃特例〃という扱いに留めていた。
 この件について堀井課長は「直接の契機ではなかった」と今回の決定での関連性を否定しており、日系人の労働問題に詳しい二宮正人弁護士も「これまで再三に渡って日系社会からの投げかけられてきた要請が、景気の回復とともに実ったのでは。裁判が与えた影響は少ない」との考えを示している。