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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年9月28日

 時速500キロで走るリニア新幹線敷設の工事が来年から始まるのに日本の鉄道の安全神話はすっかり崩れてしまったのは、なんとも情けない。東京と名古屋を約40分で結ぶリニア列車が走るルートの86%は地下40メートルやトンネルが占めるそうだが、なによりも驚くのは時速500キロの速さであり、今の東海道新幹線の320キロを軽々と抜く▼学生の頃に乗った蒸気機関車は、窓を開けると石炭の燃えカスなどが入り込み苦労もしたが、ゆっくりのんびりと走る鈍行の楽しみは格別であった。胃袋が欲しがるのは駅の掛け蕎麦であり、東北本線の宇都宮駅ではよく途中下車し名物の「餃子」にラー油と醤油を付けて口に運ぶときには人生最高の昻ぶりを覚えたものだった。窓からの眺めもいい。森が聳え田圃で働くお百姓さんらも一幅の絵である▼だが—こうした旅行の楽しみも、列車が安全という保障が第一である。そんな常識を打ち破る醜態をJR北海道が曝け出したのは日本鉄道史を汚す大スキャンダルである。線路の幅が広すぎたり、狭かったりと杜撰極まりなく、こうしたレール異常が300カ所近くもあったのだから茫然とするしかない。これでは鉄道事故が起きるのが当たり前であり、脱線や機関車のエンジン火災などが多発したのも頷ける▼公共輸送機関に求められる第一は「安全」であり、JR北海道の責任は大きい。社長らが記者会見をし「申し訳ない」と頭を下げたけれども、これで事が済むとは思えない。今も国交省が事態を把握するため調査中だが、経営陣の総入れ替えも含めた厳罰をも視野に入れたい。(遯)