ニッケイ新聞 2013年8月2日
米国の国内総生産(GDP)が第2四半期に予想以上の成長を記録した事で、7月31日の為替市場はドル高傾向に拍車がかかり、ブラジル中央銀行が3度の市場介入を行ったと1日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。ドル高レアル安の影響は物価の動向にも現れ始めており、財務省は一次産品など100品目の輸入関税を1日から引き下げる事を決めた。
米国商務省が第2四半期のGDPが前期比1・7%成長と発表した午前中、ブラジルの為替市場は一時、1ドル=2・302レアルまで高騰した。為替の動きは、3度にわたる中銀の市場介入と、米国連邦準備理事会(FRB)が当面は現行の通貨政策を維持と発表した事で鎮静化し、終値は1ドル=2・278レアルとなったが、これにより、7月のドルは前月比2・11%、今年の累積で11・39%高くなった。
レアルに対するドルが11%余り強くなった事で、市場では、米国の政策金利引き上げでブラジルなどの新興国への投資が減る可能性への懸念なども拡大。ブラジル証券市場の指数イボヴェスパは、今年の累積で20・86%下落している。
ブラジルの証券市場は、国際的な為替の動向や、国内のGDPが2%程度の成長で終わりそうな事、貿易収支の不均衡、国や企業が抱える負債、全国に広がった〃抗議の波〃の影響などで、不安定な状態が続いている。
ドル高レアル安は工業製品生産用に輸入する部品などの値上がりに直結し、5月まで低下が続いた生産者物価指数(IPP)が6月は1・33%上昇。直近12カ月の指数も上昇に転じた。
為替が原因のIPP上昇が目立つ業界は、煙草の4・73%や紙・セルロースの4・40%、情報処理や光学関連機器の2・99%などだが、大豆や肉の国際価格上昇に伴って食品加工業界の指数が2・35%上昇したのは国民生活全般にも影響する。
一連の動きを受け、財務省は、工業生産用の原材料となる品や部品など100品目に関し、昨年引き上げた輸入関税を引き下げる事を決めた。これは、1ドル=2・30レアルを超える可能性も出てきた事で輸入品が更に高くなり、生産コストが上昇するのを避けるためだ。生産コスト上昇は消費者価格上昇にも繋がるため、輸入関税引き下げは、工業界の支援とインフレ圧力軽減化の意味がある。ドル高が20%進むとインフレも1%ポイント進むという。