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リオ州知事に「辞めろ」の嵐=蹴球場修復と教育の投資が同額?!=「州政府は計画性なし」

ニッケイ新聞 2013年8月10日

 6月の〃抗議の波〃は全国に広がったが、その後、デモが続いた地域と収束した地域に分かれた。デモの主張の中にはその地域の州知事の辞任を求めるものも多かったが、その中でも、継続して非難の声を浴びせられ続けているのはリオのセルジオ・カブラル知事だ。
 同州の財務局によれば、今年上半期で医療、教育に当てられた州政府の支出額は、お世辞にも多いとはいえないものだった。今年度の予算で医療にあてられた52億レアルのうち、半年間で実際に支出されたのは28%にあたる15億レアルのみ。2014年ワールドカップに向けたマラカナンスタジアムの修復工事に投資された金額は12億レアルなので、大差がない。
 教育に対しては半年で21億レアル。今年の予算額である94億レアルの22%にしか相当しない。「市民の健康や教育よりも、スタジアム建設を優先するのか」。そんな声が町中に響くのも無理はない。
 「税金で運営されている公共サービスの適正な実施を求め、裁判を起こす市民は珍しくなくなってきた」。租税法の専門家レオナルド・ペッソア弁護士は、昨今の傾向をこう語る。
 同氏によれば、その傾向が顕著なのは特に医療の現場。病人であるにもかかわらず病院で満足な対応が受けられなかった人の家族が、弁護士や、無料で法律相談を受けることが出来る州の機関(defensoria publica)を通して州政府を訴える例が、日を追うごとに増えているという。司法当局の命令は即座に実行することが義務付けられ、州政府はそのための経費や賠償金なども支払わなければならない。いわゆる「司法積極主義」と呼ばれるものだ。
 「州が新たな病床設置やサービスに投資できなければ、結局こういった余分な出費がかさむことになる」と同弁護士は説明する。
 選挙時に、候補者たちは病院を建てる、医療の改善などの約束を並べ立ててアピールするが、その約束は達成されないまま終わることの方が多い。しかしそのこと自体は違法ではないし、犯罪でもない。「政府は毎年、達成する義務のない予算を承認しているだけ。その予算案に従って、実際に支出することは義務付けられていないということになる」(同弁護士)。
 本来支出されるべき医療・教育は予算だけ大金を計上しておいて、支出はほんの一部。票が集まりそうなサッカーには、逆に少ない予算を計上して実際はそれ以上に使う傾向があると指摘する専門家がいる。
 たとえばUFRJ(リオ連邦大学)経済学部のルイス・エドアルド・デ・アギアール准教授は「マラカナンスタジアムの修復など、本当は必要ない。費用は当初見積もられていた額を大幅に上回り、実際の必要以上の工事を行っている」と指摘する。加えて「(教育や医療への)支出が積極的に行われないのは、政府に計画性と準備がないことを意味している」と繰り返した。(9日配信ジョルナル・ド・ブラジル電子版より)