ニッケイ新聞 2013年8月13日
ブラジルを訪問中の非政府団体(NGO)アムネスティ・インターナショナルのシャリル・シェティ事務局長が、警官による暴力や職権乱用への警告を発したと10日付エスタード紙が報じた。
同団体は国連との協議資格を持ち、国際法に則り、死刑の廃止や人権擁護、難民救済など、良心の囚人を救済、支援する活動を行う団体で、日本では「国際人権救援機構」とも呼ばれる。
シェティ氏は、ブラジルの社会格差などを示す指数は改善しているが、殺人率(10万人当たりの殺人事件被害者数)は依然高く、犠牲者の20%は警官に殺されている事、行方不明者の数や1度に3人以上が殺される例も多い事などへの懸念を表明した。
6月に起きた〃抗議の波〃では、抗議運動参加者と警官との衝突が全国各地で頻発したが、シェティ氏は「〃抗議の波〃では、中流階級の人も初めてファヴェーラ住民や先住民達が日常的に感じている警官の暴力の実態を実感したはず」と表現した。また、リオ市のファヴェーラ、ロッシーニャで7月14日から行方不明になっている建築作業員のアマリウド・ディアス・デ・ソウザさん(43)失踪事件ではすべての証拠が消えている事や、ファヴェーラや先住民保護区周辺で行方不明となる人が多く白昼の殺人も多発と指摘し、警告を発している。
アマリウドさんに関しては、9日付伯字紙が、麻薬密売者が電話で「牛(アマリウドさんのあだ名)を殺した」と話していた事や、密売者に狙われていたとの警察の見解を報じた。アムネスティの呼びかけで警官による暴力に反対する集会に参加した家族らは11日、密売者との関係を否定。同集会には、2年前に軍警に殺害されたパトリシア・アシオリ判事の遺族らも参加した。