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人文研が「日本支部」開設=「日本から研究者呼びたい」=NPOへの発展も視野に=日本特別研究員も選任

ニッケイ新聞 2013年8月15日

 活動の活性化に向けて模索を続けてきたサンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長)の、新たな活路が開かれた。日本支部、日本特別研究員の設置だ。従来からの3つの調査研究分野「ブラジルの日本人移民史」「ブラジルの日系社会」「日伯交流史」、あるいはここから発展したテーマに取り組む若い研究者を日本支部から送り出し、ブラジル本部で研究を助成したい考えだ。

 メイン事業は、日本の若手研究者の当地への派遣だ。人文研は日本移民に関連する貴重な蔵書・資料約4300点を保管、その有効活用が急務となってきた。
 「コロニアでは資料を活用したいと希望する若い人材がいない。日本から研究者を呼ぶことが最も有効との結論に至った」。同支部の代表に就任した栗原猛理事はそう経緯を語り、「人文研は、少数の研究者の間では知られているが一般に知名度は低い。日本支部設立でPR効果を上げ、近い将来はNPO法人として自力で活動したい」と続ける。「認知されれば文部科学省、外務省、民間資金の活用が容易になり、知名度も高まって活動の輪が広がる」という考えからだ。
 鈴木正威元所長の発案で昨年8月頃から検討が始まり、今年3月に大阪大学に関係者が集まって運営方法など基本方針の確認が行われ、6月の理事会で承認を得た。
 本部の活動は主に日本の研究者との関係が強く、関係者との連携を強化する必要もあった。日本支部は、日本で人文研の活動に理解を示し、支援を希望する人への窓口としての機能も果たす。
 新設された日本特別研究員のポストには、百周年史調査員も務めた山本晃輔さん(大阪大学大学院)、日本移民研究を行う名村優子さん(立教大学大学院)の2人が選ばれた。今後の活動としては当面、会員増加、人文研のPRのための研究会、勉強会の開催などが予定されている。


初回研究会に30人集まる=次に繋がる有意義な会合に

 3日に「甲南大学ネットワーク東京キャンパス」で開かれた同支部第一回研究会には、関心を寄せた30人が出席し、日本における人文研の活動拠点としての意義深い一歩となった。
 森本豊富(早稲田大学教授、移民・文化エスニックセンター所長)、三田千代子(上智大学)、細川周平(国際日本文化研究センター教授)各氏、かつて人文研の客員研究員を務めた研究者ほか、学生、ウェブサイトを見て訪れたジャーナリストなどが一堂に会した。
 研究会では特別研究員の名村優子さん、国際日本文化研究センター共同研究員の飯窪秀樹さんがそれぞれ、「1920〜30年代のブラジルにおける日本人移住地建設の理念と実態」、「1930年代におけるブラジル移植民送出機関の活動状況」と題して研究報告を行った。
 栗原猛代表は、「質疑応答と全体討議では、報告者への質問からブラジル移民と満州移民との違いなどに発展するなど活発な議論が行われ、懇親会では森本、三田教授に若い学生が直接意見をぶつけるなど、有意義な会合となった」と喜んだ。