ニッケイ新聞 2013年8月20日
ブラジリア時間の18日早朝4時5分頃、リオ在住のブラジル人学生、デイヴィヂ・ミランダ(David Miranda)さん(28)が、ロンドンのヒースロー空港で「テロリスト防止法」違反容疑で逮捕された。テロ容疑のために弁護士もつけられず、突然に拘束されたという。この背景には、現在世界を揺るがしている、アメリカの世界的なスパイ疑惑が背景にある。
アメリカの中央情報局(CIA)と国家安全保障局(NSA)の元局員、エドワード・スノーデン氏が同国のスパイによる世界的な情報収集を暴露し、その後も亡命を求めて各国と交渉している話は世界的ニュースとなり、ブラジルでも大きな注目を集めている。
というのもスノーデン氏の話をもとに、イギリスの新聞「ガーディアン」紙へ6月に暴露記事を書いたアメリカ人のフリー・ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド氏=リオ在住=が、「スパイ活動はブラジルにも及んでいた」と証言したからだ。「なぜグリーンウォルド氏がブラジルについて言及したのか」と言うと、それは彼の同性愛の恋人が、リオ在住者のミランダさんだったからだ。
ミランダさんは、アメリカ人ドキュメンタリー作家、ローラ・ポイトラスさんによるスノーデン氏絡みの仕事を手伝うためにドイツに行き、帰国の途中、ロンドンを経由して逮捕された。
だが、「テロリスト防止法」を適用したと言いながら、ミランダさんが訊かれたのは、グリーンウォルド氏に関することばかりだったという。
ミランダさんは同空港で9時間ほど身柄を拘束され、コンピューターや携帯電話その他の電子機器も一時的に押収された上、弁護士との連絡さえ取れなかった。ガーディアン紙が派遣した弁護士も、ミランダさんの供述の最後15分ほどしか聞けなかったという。ブラジルのメディアでは「テロ容疑とは名ばかりで、情報漏洩への報復をしているよう」との論調で報じている。
この報を聞いたグリーンウォルド氏は、「報道の自由への攻撃であり、威嚇行為にほかならない」と断言すると共に、ボリビアのエヴォ・モラレス大統領に起こった事件と比較した。エヴォ大統領は今年の7月2日、ロシアでスノーデン氏受け入れに前向きと解釈されうる発言を行った後、帰国の途についたが、その途中、スノーデン氏が同乗しているのではと疑われ、ポルトガル、スペイン、イタリア、フランスの4カ国から領空飛行を拒否されて、オーストリアで緊急着陸。スノーデン氏はいないことを確認後に、先の4カ国の領空飛行が認められた。
ブラジルのアントニオ・パトリオッタ外相は、アメリカのジョン・ケリー国務長官が来伯した際、スパイ問題について詰め寄る一幕を見せた。ミランダさんの一件でも、ブラジル側のアメリカに対する対応がどのようなものになるか、注目される。
ブラジル政府はグリーンウォルドさんがアメリカに帰国すれば、様々な意味の危険を伴うと判断し、本人が望む場合は、アメリカや同国と連帯を組む国からの圧力に対して擁護するとの意志表示をしている。(19日付エスタード、フォーリャ両紙ならびにグローボ局サイトより)