ニッケイ新聞 2013年8月24日
【既報関連】連邦政府の医療政策「マイス・メジコス」の一環として21日に発表されたキューバ人医師4千人をブラジルに呼び寄せる計画に関し、連邦検察庁の労働問題を扱う部門(労働検察局、以下、MPT)のジョゼ・デ・リマ・ラモス検事が、両国政府間で結ばれた協定は「労働法と憲法に触れる」との見解を示した。MPTは、同件に関する捜査を開始し、政府と協議を行う意向であることも明らかにした。23日付フォーリャ紙などが報じた。
ラモス課長は「医師不足という問題解決を口実にしたもので、〃完全に違法〃。現状では疫病や地震といった非常事態に類する緊急性はない」とし、受け入れに際して、キューバ人医師らに対してブラジルで試験などの選考を行っていないことへの疑問も呈した。
MPTが問題視していることの一つは、キューバ人医師が実際に受け取る報酬の額が不明瞭な点だ。両政府間の協定では、医師の月給(1人1万レ)は伯政府から米州保健機構(Opas)経由でキューバ政府に支払われ、各医師への分配はキューバ政府が行うことになっている。
伯政府は最終的に医師に支払われる金額については把握していないとしているが、キューバ政府が他国と結んでいる協定に従えば、実際に各医師に支払う金額は伯政府から受け取った額の25〜40%、金額にして2500〜4千レだという。
「雇用というのは雇用主、非雇用者間の契約で成り立つもの。この場合、雇用主はブラジル政府だが給与を支払うのはキューバ政府や政府間協定に基づく規定。これが法に違反する」とラモス検事は指摘する。
現在「マイス・メジコス」で採用が決まった医師の数は1618人(ブラジル人1096人、外国人522人)で、需要のある1万5460人のうち10・5%しか満たしていない。キューバ人医師受け入れは、この第一次募集の最終合格者が決まった後に発表されている。
キューバ人医師らは、「マイス・メジコス」の第一次合格者が希望勤務地として選ばなかった701市に派遣されるが、大半が北東部と北部、45%が農村地帯だ。
この件は5月、パトリオッタ外相が(キューバ人医師)6千人を呼び寄せる可能性を明言したことから始まり、6月初めに両政府間でいったん凍結、保健省はスペイン、ポルトガル人医師の受け入れを強調していたが、22日に伯、キューバ両国が合意内容を最終確認の上、協定が結ばれた。
キューバ人医師の第一陣400人は今月26日に空軍機で到着し、連邦大学で3週間研修を受ける。この期間中の評価によっては資格なしとみなされる可能性もある。研修を終えた医師らは、9月16日から勤務を開始する。
なお、この計画に関しては、サンパウロ州弁護士会で医療問題を扱う委員会、労務省サンパウロ州支部監査部門も疑問を呈している。