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ボリビアの上議がブラジル亡命=ラパスの大使館で長期保護=体調悪化を係員が見かね=両政府ともに遺憾を表明

ニッケイ新聞 2013年8月27日

 ボリビアのエヴォ・モラレス大統領から殺人や賄賂の横流しなどの罪で告発を受け、ラパスのブラジル大使館に約15カ月間かくまわれていた上院議員が、連邦政府や外務省の了承なしに大使館の判断のみでブラジルに渡ったことで、両国政府に波紋が広がっている。26日付伯字紙が報じた。

 ラパスのブラジル大使館にかくまわれていたボリビアの上院議員ロジェール・ピント・モリーナ氏は、23日午後3時にブラジル大使館の車で同市を離れ、24日夕方、ブラジルとボリビアとの国境付近にあるマット・グロッソ州コルンバーに到着した。ピント氏はその後、友人から借りた小型ジェット機で迎えに来た上院外交委員会のリカルド・フェラッソ委員長とともに、25日午前1時20分、ブラジリアに到着した。
 この行為に対し、ブラジル連邦政府と外務省は遺憾の意を示した。それはボリビアの大使館側から事前に説明を聞いていなかったからだ。アントニオ・パトリオッタ外相は26日、フィンランドへの外交日程をキャンセルし、この件に関しての対応に追われた。
 政府と外務省は、ピント氏のブラジルへの移送に関しては承認もしておらず、事前の通達もなかったと表明したが、ピント氏をボリビアに送還する意図はない。それはピント氏の体調に問題が生じていたからだ。
 ピント氏は2012年5月28日、「エヴォ大統領から命を狙われている」とラパスのブラジル大使館に訴え、ブラジルに身柄の保護を求めた。同年7月8日、ブラジルは保護を行うことを了承したが、その数日後にエヴォ大統領がこれに反発して大使館に圧力を加え、両国間でこの問題に関して討議する委員会まで作られた。ボリビア政府が身柄の安全保証付きの国外退去許可を出さないため、大使館の外から一歩も出られなく。日も差さず、換気も悪い部屋で限られた話し相手との生活を1年以上余儀なくされたピント氏は、体調不良と鬱状態に陥り、最近はそれが悪化の一途にあったという。
 ラパスのブラジル大使館大使代行のエドゥアルド・サボイア氏は、ピント氏の状況を見かね、独断でピント氏をブラジルまで送ることを決め、23日15時、ブラジル海軍兵2人を護衛として2台の車でラパスを発ち、22時間かけて1600キロ離れたコルンバーに到着した。その間、ボリビア警察に3度止められたが、サボイア氏が同乗しており、ことなきを得たという。
 サボイア氏は、「人道的理由からこの判断に踏み切った」と報道陣を前に語っている。
 一方、ボリビアは、ピント氏は犯罪者であり政治亡命者ではないと発表し、ブラジルに事情説明を求めている。同氏の所属する政党・全国民主行動は右翼政党で、左翼政権のエヴォ大統領とは政敵同士の関係にある。