ニッケイ新聞 2013年8月28日
【既報関連】24〜25日に起きた、ボリビアの上院議員ロジェリオ・ピント・モリーナ氏のブラジル亡命問題を受け、ジウマ大統領が26日、同問題の責任をとらせる形でアントニオ・パトリオッタ外相を更迭した。後任にはルイス・アルベルト・フィゲイレド・マシャド氏(58)が就任する。27日付伯字紙が報じている。
ラパスのブラジル大使館勤務のエドゥアルド・サボイア氏が、1年3カ月にわたり同大使館で保護を受けていたピント氏を独断で解放し、ブラジルへ亡命させたことは、ジウマ大統領を激怒させた。
ピント氏はボリビアのエヴォ・モラレス大統領から殺人や賄賂横流しの疑惑で告発を受け、ブラジルへの亡命を求めていた。ブラジル政府は同氏の保護を了承したものの、同氏を「犯罪者」と見なすエヴォ大統領が国外脱出を許可しなかったため、ピント氏は長期間、同大使館内で軟禁状態に置かれていた。
サボイア氏は外務省にピント氏の亡命を認めるよう何度も要請したが返事はなく、「ピント氏の健康や精神状況の悪化を見かねて人道的に」亡命を手助けした。だが、ジウマ大統領は、ヒエラルキーを無視し、ボリビアとの外交関係悪化を招きかねないことを独断で行った同氏の行動が許せなかった。
サボイア氏は無期限で現在の職務を奪われることとなったが、引責はパトリオッタ外相にも及んだ。同外相は今回の件は「寝耳に水」とし、フィンランドへの外交日程をキャンセルして事実解明にあたったが、サボイア氏は「ピント氏の状態は外務省に伝えてあった」と証言している。
パトリオッタ外相は26日夕方、ジウマ大統領と15分間会談し、辞任勧告を受けた。同外相は事前に、前外相で現国防相のセウソ・アモリン氏から更迭されると聞かされていた。国防相はその前にピント氏の防衛のために海軍兵2人が帯同したことで大統領に呼び出され、国境警備の連警の責任を問われたジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法務相と共に、約1時間半会談している。
パトリオッタ氏更迭の背景には、ジウマ大統領との関係悪化もあった。ジウマ政権発足と同時に就任したパトリオッタ氏は対米外交で成果をあげたが、ルーラ前大統領が築いてきたイランとの外交を疎遠にしたともみられていた。また、同相はパラグアイが不参加の間を狙ったベネズエラのメルコスル加盟に反対、大統領と意見が割れた。デイヴィジ・ミランダ氏が今月18日、恋人の米国人ジャーナリストが米国のスパイ容疑を告発した件に絡み、英国の空港で9時間拘束された件でも、同相が強く出なかったことが大統領の機嫌を損ねたと言われる。
パトリオッタ氏の後任には、ルイス・アルベルト・フィゲイレド・マシャド国連大使が就任する。フィゲイレド氏は09年にデンマークのコペンハーゲンで行われた第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP—15)や12年のリオ+20で交渉役をつとめ、ジウマ大統領はかねてからその手腕を高く評価していた。後任大使はパトリオッタ氏が務める。