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稀代の才人ヴィニシウスの一側面=美食外交官ならではの料理本=知られざる特技を公開

ニッケイ新聞 2013年8月29日

 ブラジルの歴史に残る「才人」と言えば思い出される人にヴィニシウス・デ・モラエス(1913—80)がいる。大作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンと組み、世界的に大ヒットした「イパネマの娘」など多くの傑作を残した作詞家として知られるだけでなく、歌手としても、トッキーニョらと共に名作を発表。さらには外交官としても活躍し、政治活動を行う傍ら、フランスの音楽家にまで影響を与えるなど、その活動の多才さは枚挙に暇が無い。
 ヴィニシウスは美食家として知られ、国の内外にこだわりのレストランを持つだけではなく、みずから台所に立ち、料理を振る舞うことでも知られていた。
 そんなヴィニシウスを知る人にとって見逃せないのは、生誕100周年を記念して9月6日に刊行される、ヴィニシウス自身が愛したメニューをまとめた料理本『ポイズ・ソウ・ウン・ボン・コジニェイロ(だって僕、良い料理人だもん)』だ。
 この料理本プロジェクトは、2011年に亡くなったヴィニシウスの娘のルシアナさんの発案だ。彼女のパートナーとして23年間を過ごしたエディス・ゴンサウベスさんが、料理人のダニエラ・ナルシゾさんと共同で完成させた。エディスさんとダニエラさんは、ヴィニシウスの子供たちや親友などの証言をもとに、同氏の愛した料理の再現につとめたが、中でも現在も存命のヴィニシウスの一番下の妹で、97歳のレアチチア・クルース・デ・モラエス・ヴァスコンセロスことレタさんの存在が大きい。レタさんの証言により、祖母から受け継ぎ、ヴィニシウスが子供時代に愛したメニューの再現が可能だったという。
 ヴィニシウスの愛した料理満載の本には、ビールをかけながら焼く「鳥の丸焼き」やデザートの「パポ・ド・アンジョ」といった大好物のほか、チュニジアで好んで食べた「クスクス」や、ポルトガルでの「バカリャウ」、フランスでの「タルタル・ステーキ」など、世界中を旅行した美食外交官ならではの外国料理メニューも掲載されている。
 また同書には、現在のブラジルきっての有名シェフ、アレックス・アタラも文章を寄せる。
 この料理本をきっかけに、誕生日である10月19日まで100周年記念の企画が目白押し。10月にはこれまで発表された詩を集めた「全集」や、カエターノ・ヴェローゾやシコ・ブアルキなどが参加したヴィニシウスに捧げるCDも発売される予定だ。(8月28日付フォーリャ紙より)

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