ニッケイ新聞 2013年8月31日
最高裁判所のジョアキン・バルボーザ長官が、最高裁判事の給与に関し、既に承認されている5・2%に4・06%を上乗せした計9・26%の調整を求める法案を連邦議会に提出した。上下両院で承認され、大統領裁可を得れば、2014年1月からは現状の2万8069レアル(約115万5102円)から3万658レアル(約126万1646円)に上がる見込みだ。上乗せ分が承認されない場合の新給与額は2万9462レアル(約121万2428円)となる。
ブラジルの憲法では、立法、行政、司法の各機関のうち、最高裁判所の判事の給与を最も高く設定するよう定められている。最高裁判所の判事の給与は公務員の給与の上限とされ、大統領にも最高裁判事と同じ額が支払われている。
バルボーザ長官は法案提出の理由に、2012年1月から今年12月までのインフレ昂進(物価の高騰)を挙げている。ちなみにカルロス・アイレス・ブリット前長官は最高裁判事の給与を2013年から7・12%上げる法案を提案したが、議会で認められず、5%の値上げにとどまった。
バルボーザ長官(58)はミナス・ジェライス州の貧困層の家庭出身で、2003年から最高裁判事、2012年11月に黒人としては初めて長官に就任した人物だ。
ブラジリア大学法学部を卒業、フィンランドのブラジル大使館、連邦検察局などを経て、フランスのパリ第2大学で法律の修士号、博士号を取得した。リオ州立大学で教職に就き、その後はコロンビア大学など米国の名門大学で学んでいる。英語、仏、独語、西語が堪能というエリートだ。
現在も進行中の、ルーラ前大統領政権時代に起きたブラジル史上最悪の政治スキャンダルとされる「メンサロン事件」の裁判では、報告担当判事という中心的な役割を担い、与党の労働者党(PT)の元閣僚や現職議員を含む政治家にも容赦なく重い実刑判決を科す票を投じたことで、有力誌の『ヴェージャ』が「ブラジルを変えた男」して大々的に扱うなど、知名度が一気に高まった。
その歯に衣着せぬ物言いで常に言動が注目されており、一部の国民の間ではヒーローのような存在のバルボーザ氏。来年の大統領選への出馬を望む声もあるが、本人は一貫して出馬を否定している。(29日付グローボ局ニュースサイトより)