ニッケイ新聞 2014年3月20日
先月から1カ月、群馬県大泉町のブラジル人学校で奉仕活動をしている早稲田・上智大によるボランティア団体「ノーヴァ・エスペランサ」の女子学生2人が、スザノ日伯学園で研修を行った。上部組織であるNPO「ブラジル人労働者支援センター」が、昨年から始めた派遣事業だ▼帰国当日に本紙を訪れた二人から、同学園で「日本に興味をもってほしい」と日本のよさを紹介したところ、日系人の子どもが露骨に嫌そうな態度をしたので戸惑った―との話を聞き深く印象に残った。「日本ってそんなにいい国?」「自分の国が惨めに思える」とこぼす子までいて考えこんだそうだ。習いたての日本語で親しげに話しかけてきたのは、むしろ非日系だったとか▼子どもらが嫌そうにした真意は分からない。親や祖父母からはもちろん、〃日伯学園〃という特徴からして学校で散々その種の話を聞かされていて「またか」と嫌そうな顔をした可能性も感じる▼親は常に子どもに良かれと思って教育を与えるが、本人は時に押し付けと感じ、興味の芽をつぶしてしまうこともある。その結果、親に反発して逆の道を歩むのはよくある話だ。残念だが、それも若者の日系社会離れの一因となっているのかも▼一世がよく使う「二世はだめだ」というセリフは、親の期待に沿わなかった子へ向けられた失望という意味もあるのだろう。日本ですら親子間の世代間ギャップがあるのだから、子とは国籍や言語すら違うコロニアにないはずがない▼その二人は「彼らは日系人であることを重苦しく感じているのでは」と感じた。日系人として子孫には胸を張って欲しいと願うが、その裏返しが〃重苦しい〃ということなのか。(阿)