ニッケイ新聞 2013年7月2日
サンパウロ市東部サンマテウス区の貧民街ヴィラ・ベラで6月28日未明、複数のボリビア人家族が住む2階建ての民家に強盗集団が押し入り、5歳のブライアン君を殺害した。6月29日〜7月1日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。
警察の調べによれば、ブライアン君のおじが衣服の納品を終えて戻り、車を車庫に入れようとしたとき、強盗5人が家に押し入った。その家には衣服の裁縫を行なう夫妻4組、ブライアン君を含む子ども3人のボリビア人2家族11人が共同生活をしていた。
ブライアン君や両親は上の階に連れて行かれ、暴行された。驚いたブライアン君が怖がって「お母さん、僕を隠して」と言ったため、母親がブライアン君を抱え込むようにしてひざまずいたが、ブライアン君は腕の中で「死にたくない。僕を殺さないで、お母さんを殺さないで」と訴え続けた。犯人らは母親が3500レアル、おじが1千レを差し出しても満足せず、「もっと金を出せ、さもないと子供を殺す」と脅した。母親がもう金はないと空の財布を見せると、泣き声に苛立っていた犯人の一人が、母親の腕の中にいたブライアン君の頭を撃ち抜き、仲間と共に逃走した。
警察は40人以上の捜査員を動員して同貧民街を捜査。その日のうちに4人を連行して面通しを行い、1人の身柄を拘束した。警察は29日午後までに、18歳と19歳の男を逮捕し、殺害犯とみなしていた17歳の少年の身柄を拘束した。
しかし3人は、殺したのは(盗みで捕まり、脱獄中の)20歳の共犯者で、その場では共犯者の行動が理解できなかったが「そいつを殺す事も考えた」と供述している。
犯行があった28日の午後、少なくとも200人のボリビア人が地元警察署前に集まり、「ブライアンのためにジュスチッサ(正義)を!」と書いた紙やボリビアの国旗などを掲げてデモを行なった。また、激昂した人々が警察に連行されてきた容疑者たちに殴りかかろうとする場面もあった。29日にはブラス区でも150人がデモを行なっている。
28日のデモに居合わせたボリビアのジャイミ・ヴァルジヴィア総領事は事件を凶悪犯罪と位置づけ、「我々はブラジルの法律に従っている。早く犯人を捕まえてほしい」と憤りをあらわにした。
総領事館によれば、ブライアン君の一家は、同君のおじに当たる男性の呼び寄せで半年前に当地に移り住んでおり、合法的な滞在だったという。
ブライアン君の遺体は2日、母国ボリビアのラパス市近くで埋葬される。両親はもう一度ブラジルに来る気はないという。