ニッケイ新聞 2013年7月4日
静岡県浜松市の県立静岡文化芸術大学で6月22日、多文化共生をめざした「第5回多文化子ども教育フォーラム」が開催され、県内はもとより、愛知、岐阜、遠くは東京や岡山など他県からも教育関係者ら70人が来場したほか、静岡、中日、毎日、読売、日経など各新聞社が取材した。「教育支援策をめぐって当事者学生が物申す」を副題に、同大の生徒らが市教育委員会に生の声をぶつけるなど、在日ブラジル人子弟を中心とする外国籍学生による積極的な参加が光るフォーラムとなった。
初めに、主催者である同大の池上重弘教授がフォーラムの趣旨を説明し、昨年4回行われた成果を振り返り、最後のフォーラムで提言された「研修制度の充実」「コーディネーターの配置」「支援に関わる人材の身分保障」などの内容を紹介した。
ここから外国籍学生が中心の進行になった。まず2月に同市内であった「第3回はままつグローバルフェア」で発表された、彼らが生い立ちを振り返り、差別的扱いを受けたり、逆に仲間から支えられながら大学進学してきた実体験を語る感動的な映像が流された。
さらに1カ月前から総勢9人の外国籍の学生(うちブラジル8人)らが議論を重ねて練ってきた「物申す」内容が発表された。当日はうち7人の学生が発表に立ち、教員間の対応の差、取り出し授業、外国人児童への説明会、親のサポート、教員の研修の5項目について問題点を指摘し、次の3点を提言した。
「取り出し授業は最初の適応段階に集中的に行い、その後は普通のクラスで一緒に学ぶ方がよい」「教員によって外国籍の子供への対応に差がある。教員の意識の平準化を図るために、もっと外国籍学生の存在や経験を活用し、教員向けの異文化理解講座を開催すると良い」「外国籍の子供の親(保護者)への教育に関する意識啓発の重要性」などの点が強調された。
最後に質疑応答と討論が行われ、10人ずつのグループに学生が一人ずつ入って参加者の疑問に答え、生の声を届けた。
ほかにも、同市教育委員会による取り組みの説明、同大の上田ナンシー直美准研究員(二世)による在日ブラジル人の現状や課題の説明もあった。
メールで本紙からの質問に答えた池上教授は、「多くの方々が大変満足してくださって嬉しい。今後は日本で育って、工場労働以外の仕事についているブラジル人の声を聴く機会なども設けたい」と今後の展望を語った。
同フォーラムは情報交換・共有、現状把握、課題解決にむけた検討や推進、提言などを目的に昨年スタートした。