ニッケイ新聞 2013年7月17日
医師数の増加、医師免許の規定変更などを盛り込んだ保健医療政策「マイス・メジコス」(Mais Medicos)を連邦政府が8日に発表したが、保健省のデータによれば、国内の保健インフラは過去5年、医師数の増加が追いつかないペースで増え、バランスの取れていない実態が明らかになっている。14日付エスタード紙が報じた。
過去5年間に登録された医療機器数は72・3%、病床数は17・3%、病院などの施設数は44・5%増えたが、医師は13・4%増にとどまっている。数にすると医師29万4798人に対し、医療機器は129万9191台もある。
政府は年初、都市郊外や地方で働く医師の募集を全国規模で行った。パディーリャ保健相はその結果について「既に完成した施設で1万3千人の医師が足りず、開所できない施設もあったが、集まった数は4千人にとどまった」と話す。
医療機器はより裕福な州に集中し、例えばサンパウロ州ではマラニョン州に比べ住民1人当たりの医療機器数は3倍にもなる。
ただし、医療機器が最も増えたのはロライマ、ロンドニア、アクレ、パラーなどの北部の州で、2008年の2倍以上となった。しかし、医師不足が最も顕著なのもこの地方で、結果として医師数あたりの機器の数も最も多くなっている。
サンパウロ医師組合のシジ・セリオ代表は「医療機器数が増えてもインフラがよくなったことは意味しない」と指摘し、「医師数にしてもインフラにしても、問題はそれらの配置が不平等であること」と強調する。同氏によれば「医療機器が顕著に増加したのは、医療機器メーカーなどが機能している病院を開拓したから」で、インフラ増加と医師数が見合ってないことは開所されていない病院が過剰に多いことを意味しないという。
各医師団体は、「問題は医師不足ではない」と指摘する。「必要なのは遠隔地の病院の労働状況の改善で、問題は公共病院で働くために十分な経験がある人材の不足だ」と主張している。
医療の問題は地域毎に異なり、病院はあるが資金や医師不足で開業できない市がある一方、医師はいるのに働く場所がない市もある。
ポルト・アレグレから60キロの南大河州バーラ・デ・リベイロ市の住民1万2千人は、13年間も病院開業を待っている。連邦政府と州、市の予算で90年代に建設、2000年に開所準備が整った病院には未だ総合臨床医が一人と看護士がいるだけだ。一週間続く背中の痛みで来院した40代女性は、「注射で痛みは取れたけど原因はわからないまま。せめて外傷の検査かX線検査をしてほしかった」と嘆く。
一方、当面は病院建設や外国人医師の招聘は不要とする市もある。サンパウロ州南西部のモンテイロ・ロバト市(人口5千人)のSUS診療センターで1日平均30件診察する外勤医師は、患者の9割は同センターで対処でき、重篤なケースはサンジョゼ・ドス・カンポスの病院に搬送している。「病院も外国人医師も要らない。必要なのは救急医療施設が機能し、医師給与を引き上げるための資金や支援」とのダニエラ・ブリット市長の言葉は、病院にかかる経費捻出さえ困難な小自治体の現実を浮き彫りにしている。